ミャウンミャの事務所に泥棒が…!
 
 こんにちは!ミャンマー ファミリークリニックと菜園の会(MFCG)の代表理事・医師の名知 仁子(なちさとこ)です。いつも応援を頂きありがとうございます。
 今回は、私が住んでいるMFCGの事務所に泥棒が入りそうになったことについてお伝えしたいと思います。

実は今回で3回目

 2022年10月10日の深夜1時30分ごろ、1人の男性が張り巡らされている鉄条網を乗り越えて敷地内に侵入しようとしました。私がヤンゴンから戻る前日だったのですが、MFCGのメンバーが私の代わりに事務所に詰めていたため、物音に気が付き事なきを得ました。
 実は泥棒に入られそうになったのは今回で3回目!私は2015年1月にこの地に移り住んでから7年目になります。しかし、3回の泥棒騒ぎはこの1年半の間に起きているのです。1回目は、2021年4月のティンジャン(ミャンマーのお正月)期間に、2回目は今年4月の同じくティンジャンの時期に。そして、わずか半年後… 本当に驚いています。

住民の生活がひっ迫している

 ミャンマーの人々の性格について「穏やかで大人しい」と表現されるのをお聞きになったことがあるのではないでしょうか?
 例えば、タクシーで携帯を忘れても、数日後にはなぜか手元に戻ってくる。といったことを経験された方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 日本では、外国人がタクシーで携帯を忘れても、タクシー会社の連絡先がわからなければ戻ることは稀で、仕方がないとあきらめることも多いそうです。もちろん、警察に届け出れば戻る確率は高いのですが、滞在期間が短い場合はそれも困難です。ミャンマーではタクシーの運転手さんがお客さんを探し、自分が忘れた携帯が手元に戻ってくる。正直なミャンマーの人たちの国民性を表す良い例です。
 しかし、現在は携帯が盗まれる!バイクが盗まれる!そんなことが日常的に発生しています。それだけ、住民の生活がひっ迫していると感じています。現実は厳しい!
 このようなことが起こるのは、私は“人間の業”ではないか?と感じています。もともと、人間の心の中には“闇”も“光”も存在している。その“闇”や“光”を引き出すのは人間の心に触れる環境や状況ではないか? と、この事実に向き合った時に感じます。
 実は、私も盗みを犯さずにいられるのは、そのような“縁”がないからであって、心が善いからではない。また、盗みをするつもりがなくても“縁”があれば、犯すこともあるのかもしれない、と考えています。反対に、良き“縁”に恵まれるならば、自分のことを脇に置いても、他人のことを助けてさしあげたい、何とかせずにいられないという心が引き出されるのも、ほかならぬ人間であるということではないでしょうか?
 
 世界中が混沌としている中、日々の生活に埋もれることなく自分の内面の人間性を見つめ、ミャンマーの僻地で暮らす村の住民たちと共に彼らの希望を失うことなく、未来を、夢を創っていきたい!
 それが我々の願いです!

(2022年11月号掲載)

名知 仁子
[NACHI SATOKO]

1963年生まれ。1988年獨協医科大学を卒業後、日本医科大学付属病院第一内科医局入局。2002年、国境なき医師団に入団し、同年タイ・メーソートの難民キャンプ、2004年からはミャンマー・ラカイン州で医療支援に携わる。また、2003年には外務省のODA 団体、ジャパン・プラットフォームの要請で、イラク戦争で難民となったクルド人の医療支援に参加。2008年には、サイクロンで被災したミャンマーのデルタ地域で緊急医療援助に参加する。同年、任意団体ミャンマークリニック菜園開設基金を設立し、2012年6月にNPO法人ミャンマー ファミリー・クリニックと菜園の会(現MFCG)設立、現職。

ミャンマー ファミリー・クリニックと菜園の会:https://mfcg.or.jp/