TAX AUDITの状況
 税務について、今年度多くなってきたTAX AUDIT。少しずつ、事例が増えてきています。まず、大きなポイントは、2019年に施行されたTAX ADMINISTRATION法に基づいた証憑の保存、記帳の義務の徹底です。賦課決定方式により課税が行われていた時代のタックスクリアランスにおいては、税務署に提出する書類はむしろコピーであったため、大量のコピーを作成し、税務署に持ち込むといった方法が取られていました。しかし、2019年、申告納税方式がスタートし、日本と同様にTAX AUDITという税務調査が行われることとされました。将来的には、現地での税務調査が主流になるかと予想されますが、今年度は、まず証憑を持ち込んでの調査が行われています。このTAX AUDITにおいては、オリジナルの証憑の提出が求められます。また、記帳された元帳に基づいて、一つ一つ細かなチェックが求められます。経費についても、交通費、通信費、人件費、交際費を始め、損金性の詳細な検証が行われます。指摘されるポイントについて、当局の担当チームによっては、意外と納得性の高い指摘も見受けられます。しかし、担当チームによっては、不当な決定があるなど、対応にまだバラつきがある印象です。納税者側においても、損金の正当性について、しっかりと説明できるようにしておく必要があります。証憑の保存期間は、7年間。オリジナルの資料を提出できない場合には、罰金もあります。TAX AUDITに対応できる様に、きちんと書類の保管をして備えておきましょう。

各種手続きの手引き
 2022年度においては、ドラスティックな改正といったものはみられませんが、ちょこちょこ手引きは出ています。IRDのウェブサイトなどをご参照してみてください。
 そのうちの1つ。所轄税務署の変更を申請したい場合の手引きをご紹介します。事業の種類変更や事業規模の変更などがあった場合、例えばMTO→LTOなどに所轄税務署の変更希望を出すことができます。
所轄税務署を変更したい場合の手続き方法の手引き(2022年8月発行)

申請可能な場合
・住所変更がありDICAに申請が完了した場合
・事業種類を変更した場合
・事業規模の変更があった場合
・その他の理由がある場合
・上記の『その他の理由』について、IRDが認めない場合は、変更は不可

必要書類等・税務署変更のための所定の申請書
・納税者登録証のコピー
・会社登録証(COI。DICA発行)のコピー
・会社のエクストラフォーム(DICA発行)のコピー
・課税完了の期限までの納税済証であることの証憑のコピー
・昨年の決算報告書のコピー
・代理人が行う場合、委任状

どのような理由で所轄税務署を変更したいのかの詳細も提出が必要です。申請フォームは、所轄税務署等の他、IRDのウェブサイトでダウンロードできます。

申請期限
・現在納税義務を守っている納税者の場合
変更したい課税年度の1カ月前まで
・初めて納税者登録を申請した事業者
納税者登録番号と共に所轄税務署が指定された旨の知らせを受け取った日から1か月以内

提出場所
・所轄税務署の変更を希望する納税者
CTPSU(Centralized Taxpayer Service Unit)の事務所

・ヤンゴン以外の場合
所轄税務署

申請方法
・直接提出
・郵送
・メール送付(CTOSU宛)

許可
 CTPSUと所轄税務署の担当は、変更できるかどうか速やかに納税者に連絡することとされています

終わりに
 5、6年前までは、賦課決定方式により、赤字であっても外形標準的に課税されるなど、諸々の問題があり、それを受けて導入された申告納税方式。TAXAUDIT制度が進む過程で、改善された面もありますが、従前の不当な課税を髣髴とさせる場面も逆に少し見られるようになりました。正しい徴税制度の構築のため、制度の後戻りが無いことを願います。

(2022年11月号掲載)

執筆者プロフィール

若松裕子
Japan Outsourcing Service Co., Ltd.(税理士法人Right Hand Associates)ヤンゴン事務所長・税理士。
2014年よりミャンマー駐在。中小企業から上場企業、ミャンマー国内法人まで幅広く事業をサポート。趣味は坐禅。