医療の届かないところに医療を届ける
平成28年度第48回社会貢献者表彰を受賞いたしました特定非営利活動法人ジャパンハート理事長の吉岡春菜でございます。社会貢献者表彰の受賞により多くの方から団体を認知いただき、それが様々なご支援につながっていることを改めて感謝申し上げます。この度、「受賞者の足跡」のバトンをいただきましたので近況をお伝えしたいと思います。

ジャパンハートとは
 私たちは2004年からミャンマー、カンボジア、ラオスなどの医療保険制度の整わない東南アジア諸国を中心に、「医療の届かないところに医療を届ける」をミッションとして国内外で活動している団体です。いずれの国々も新型コロナウイルス感染症の影響を受け、海外においては日本人医療者の渡航がままならなくなり、現地人スタッフが奔走して患者さんの受け入れを止めることなく医療活動を継続してまいりました。このような現状を振り返りますと、パンデミックの影響はマイナス面ばかりではなく、現地スタッフの自立につながりその恩恵を受ける患者さんが増える…というプラス面も感じております。
 カンボジアにおいては、国内では治療が難しい小児固形腫瘍の外科治療を2018年より開始しました。カンボジア全土の医療機関とネットワークをつくり、年間約80名にも上る小児がんの子どもたちを無償で治療しています。

子どもの生存率はわずか2割
 世界では、小児がんと診断される子どものうち8割がジャパンハートの活動地を含む中低所得国で暮らしており、その生存率はわずか2割といわれています。一方、残りの2割は日本を含む先進国の子どもで生存率は8割。私たちはこの現実を受け止め、なんとか世界中で小児がんと向き合う子どもたちの生存率のギャップを解消していきたいと考えております。
 日本国内に目を向けますと、新型コロナでクラスターが発生した医療機関や社会福祉施設への人的・物的支援に流行初期からいち早く取り組んでまいりました。2022年8月時点で全国の自治体に対して、計198カ所の医療/福祉施設にのべ481名の医療チームスタッフを派遣し、いのちと向き合う前線現場の後方支援を継続しております。
 社会貢献者表彰を受賞した団体として、これからもより一層の活動の充実を目指し、一人でも多くの「目の前のいのち」と向き合っていきたいと思います。

PROFILE
1979年大阪府生まれ。2003年に川崎医科大学医学部を卒業、独立行政法人国立病院機構岡山医療センターで小児科専門研修を受け、ジャパンハート創設者の吉岡秀人(現・最高顧問)と結婚。ミャンマーでの研修、岡山県の病院勤務を経て2011年、東日本大震災の医療支援をきっかけにジャパンハートに入職。2017年から理事長。2018年からジャパンハートの国内事業であるSmile Smile PROJECTを担当。

(2022年10月号掲載)