現地ローカルスタッフの成長を願おう
 現在のミャンマーは、金融関係を始めとして、ビジネス環境的に非常に厳しい状況が続いています。この状況は、ある時、突然改善するといったような性質のものではありませんので、中長期的な視点で戦略を立てて、事業計画に落とし込む必要があろうかと思います。まさに非常時のリーダーシップが発揮される場面と言えるでしょう。

 日本人エグゼクティブが、ミャンマーに張り付くことのできない場面も多くあるかと思います。この機会を、現地ローカルスタッフの成長の機会ととらえて、少しでも前向きに進んで行きたいものです。ミャンマーに残って日系企業のために奮闘してくれているみんなにぜひ力をつけてあげましょう。

 経理面においては、これまで、日本人が担っていた部分の権限移譲を行うことも必要になってきます。その場合には、現金や小切手、会社印、インターネットバンキングの責任の所在や、ダブルチェックの環境を整える必要があります。月次の書類を締めて、オリジナルの資料を数営業日以内に会計事務所に提出することによって、スタッフさんのモチベーションをキープしたり、不正の防止につなげたりすることも必要です。また、現地でトラブルや緊急対応の必要がある事案が発生した場合に、速やかに指示が出せる状況作りも大切です。コロナ禍は、困難をもたらしましたが、リモート業務の発展という思わぬ副産物も産み出しました。これらをさらに発展させて、より権限移譲を進め、責任感を持って、自走できる組織作りが肝要と思います。

 毎朝のミーティングやフィードバッグも有用です。特に、社員数が激減している場合には、相談する相手もおらず、スタッフが一人悶々としている場合も考えられます。手前みそで恐縮ですが、会計事務所は、常に会社の経理スタッフさんとは懇意にしているため、上司に直接言えないちょっとした悩み相談を受けることもあります。軽く相談にのってくれて、ニュアンスを日本側にも伝えてくれるといった外部の人を確保しておくことも必要でしょう。日報や週報の速やかなフィードバックなど、本人がPDCAを回しやすい環境も整えてあげたいものです。

 弊事務所では、毎年、繁忙期が終わって6カ月間は、インプットの時期と位置付けています。集中的に、内部講師、外部講師による研修を行っています。個の成長を最大の目標としており、徹底的に成長型マインドセットを重要視します。最近では、スタッフがアメリカの大学の無料オンライン講座などを見つけてきて、それをみんなにシェアして叢林のごとく学ぼうという姿勢も出てくるなど、自ら学ぶという傾向がいっそう増えてきました。

 多くの会社さんで、外国に留学するという理由で社員が退職するといった場面が見られます。しかし、すべての若者が簡単に国外に留学や就学に行けるわけではありません。元々、勉強熱心なミャンマー人ローカルスタッフさん達。ミャンマーに居ながら、グローバルに対応できる力をつけてあげたいものですね。

 良い時も、困難な時も、支え続けてくれているローカルスタッフの皆さん。非常時のリーダーとして、方向性を示すことは非常に大切。然るべき再稼働のときに、力をつけたスタッフさんの笑顔を見るために、この困難を柔軟に乗り越えてまいりましょう。

(2022年10月号掲載)

執筆者プロフィール

若松裕子
Japan Outsourcing Service Co., Ltd.(税理士法人Right Hand Associates)ヤンゴン事務所長・税理士。
2014年よりミャンマー駐在。中小企業から上場企業、ミャンマー国内法人まで幅広く事業をサポート。趣味は坐禅。