日本からミャンマーへのオフショアローンの返済停止と実務対応

1. 外貨の強制両替、海外送金の許可制を定めた中央銀行通知2022年第12号
 2022年4月3日に、ミャンマー中央銀行通知2022年第12号(以下、「本通知」といいます)が発せられています。この通知は、①外貨収入の1営業日以内のMMK への両替を義務付け、②これを既存の外貨預金口座の外貨にも適用していますが、これに加えて、海外送金の外為監督委員会による許可制を採用しています。
 すなわち、海外への送金については、外為監督委員会(Foreign Exchange Supervisory Committee)による許可を得て、外貨取扱銀行においてのみ行うことができるとしています(本通知第4条)。具体的には、国内居住者から海外への送金は、外為監督委員会の許可によってのみ行うことができ、以下のものを含む海外送金は、外為監督委員会による審査が行われるとしています(同中央銀行指令第3条)。また、かかる許可が得られた場合、外貨取扱銀行は中央銀行所定のレートで外貨を販売することとしています。
(a) 輸入の支払(前払を含む)
(b) サービスの支払その他の支出
(c) 外国からの投資への分配及び資本の払戻
(d) 海外への投資の送金
(e) 海外からのローン及び利息の支払
(f) 海外投資規則第27条 (foreign exchange dealer による少額の海外送金(旅費、医療費、教育費その他))所定の支出の送金

2.国内居住者の海外からのローンに関するレター(2022年7月13日)
 同レターにおいては、海外からローン(金銭及び現物による貸付)を受けている者は、海外の債権者と交渉し、元本及び利息の返済を暫定的に停止するために必要な、利息及び元本の返済期限(返済スケジュール)の交渉を行わなくてはならないとしており、これについて外貨取扱銀行は、該当顧客に通知するべきこととしています。

 すなわち、ミャンマーでの事業について、日本からのオフショアローンにより資金を供給している場合、その元本及び利息の返済を停止する必要があり、オフショアローンについて、以下の対応が必要となります。

a. 債権者と交渉して、元本及び利息の返済を延期する合意をすること
 中央銀行からの通知、レターを見ても、この元本及び利息の返済の停止がいつまで継続するかは明確ではありませんが、まずは2022年について返済を行わない合意をするケースが多いようです。

b. 当該元本及び利息の返済時期の変更について、中央銀行に届け出て認可を得ること
 海外からのオフショアローンについては、中央銀行の個別認可が必要となっています。今回の措置により、返済の時期が変更になるため、中央銀行に対して、元本及び利息の返済時期の変更を申請する必要が生じてきます。

(2022年10月号掲載)

甲斐史朗(かい ふみあき)
TMI総合法律事務所パートナー(ミャンマー担当)。日本国弁護士。早稲田大学政治経済学部政治学科、ロンドン大学LLM卒業。2015年1月よりヤンゴンオフィス駐在。