源泉所得税の納付手続きの改正、税務監査のスタート

 海外に支払うサービス料等についての源泉所得税の天引き、納付等について、IRDは、2022年6月9日付けにて、手続き方法の一部変更の発表を行いました。今後、納付については、所轄税務署の許可を受ける必要があります。

 税法においては、居住者や非居住者に対し、利息やロイヤリティー、サービス代金等を支払う場合には、所定の源泉税を天引きし、支払いから15日以内に、納付することとされています。

 各税率については、下記の通り。

 これらの源泉所得税の手続きについては、2015年くらいから運用が厳しくなりました。2020年9月3日には、当局から手続きに関する手引きが発表されました。事例を紹介して、納税者が上記の支払いを行う場合に、正しく源泉所得税を天引きして期限内に納付することという点の念押しがありました。

 今回の2022年6月の発表は、この2020年の発表を撤回し、源泉所得税の天引きについて、運用よりを厳密化するという内容で、所轄税務署の承認を受ける必要があるとしたものです。

 該当の支払いがある場合、納税者は、所定の書類を所轄税務署に提出し、承認を得なければならなくなりました。所轄税務署というのは、LTOやMTOの様に、通常の法人税等を所轄している税務署が該当します。また、所定の書類とは、支払いに関する請求書、支払者、受取者(外国もしくはミャンマーにおける非居住者)の当該国においての登記情報、条約締結国については、当該外国における証明書類等となります。

 これまでは、納税者の判断によって行われてきた源泉所得税の納税手続きですが、今後は、サービス料等の支払いを行う前に、これらの所定の手続きを踏む必要があります。該当の支払いがある場合には、時間を要すると思いますので、あらかじめ準備しておきましょう。

 また、今年に入って、TAX AUDITという税務署による税務監査がスタートしています。2019-20年度からスタートした申告納税方式について、タックスクリアランスとは別に、より詳細な税務調査が行われます。

 今のところまだプレスタートという感じで、現地調査の数は少ないです。還付額がある場合、繰越欠損金がある場合、経費が過大ではないかと思われる場合について、重点的に行われている様相です。免税事業の商業税の取り扱いや、キャピタルゲイン、減価償却等々、タックスクリアランスよりもっと明確なターゲットをもって行われている印象。今後、より税務リスクが高まっていくと思われます。納税額が出ていない場合でも税務対策に留意が必要です。

(2022年8月号掲載)

執筆者プロフィール

若松裕子
Japan Outsourcing Service Co., Ltd.(税理士法人Right Hand Associates)ヤンゴン事務所長・税理士。
2014年よりミャンマー駐在。中小企業から上場企業、ミャンマー国内法人まで幅広く事業をサポート。趣味は坐禅。