2021年~2022年特別事業年度の対応

 昨年発表の改正のとおり、事業年度時期の変更が再び行われ、法人、個人共に事業年度は、2019年以前と同じ、4月~3月となりました。そのため、2021年~2022年度については、2021年10月~2022年3月の半年間という特別事業年度となり、その後は、再び4月~3月の1年間が事業年度となります。2019年は、これと逆のパターンで、それまで4月~3月だった事業年度が、改正となり10月~9月に変更されたため、突如、4月~9月の半期の特別事業年度が登場し、皆が混乱したという経緯がありました。オフィシャルの発表は、進行期の5月でした。期の途中で『今期から事業年度変えま~す』といった具合。当時は、商業税の免税判定はどうするのか、個人の居住者判定はどうするのか、繰越欠損金の取り扱いはどうなるのかなどなど、現場で対応する税務会計業界から、たくさんの疑問が出ました。公式の詳細な手続きのガイドや申告フォームが不十分なまま、申告時期に突入し、その泥縄っぷりにため息が出たものです。
 基幹的な制度について、突如改正の発表がなされることが散見されるミャンマー。税務に限らず、ミャンマーの法改正や突として行われる通達の乱発については、法的安定性、予測可能性が著しく低いものであり、事業継続にあたって、民間側もかなり困惑させられます。
 一方、通達が発表されても、クレームを受けて変更が多々起こることにも驚かされます。今回の半年間の特別事業年度については、各規定の適用判定などについて、前回の特別事業年度の取り扱いを準用して行われるものと思われます。前回の事例があるため、現場も前回ほどまでは混乱はしていません。
 申告スケジュールについては、10月~3月の半年で会計を締めることとなり、税務申告については、法人・個人とも6月末日が期限となります。今年は、昨年度に引き続き、コロナ関係の税額控除等はありません。また、申告期限を延長しないといけない事由が生じている場合には、申告期限前3週間前までに書面により申し出て、許可を受ける必要があります。お気をつけください。
 荒い面も多々ありますが、2019年度からの税務改正は、若干進んでいる印象です。オンライン申告やオンライン納付も定着しました。減損やIFRSへの税務の対応も少しずつ見解が見えてくるのではないかと思われます。つくづく、ミャンマーの人たちの変化への対応能力にも驚かされます。
 しかしながら、コロナ、政変と税務処理が滞っていた期間が長く、ただでさえ役所の積み残しが多い中での今回の事業年度変更。当局職員も再び、年次のタックスクリアランスや、特別事業年度の申告対応にも追われることとなっており、未だ税務署関連の手続きについては、スムーズにいっているという状況ではありません。会社清算のタックスクリアランスについても、1年を超えて滞っている状況が多く見られます。
 ここにきて金融の混乱も加わり、困難は続いておりますが、なんとか打開策をさぐってミャンマーでの事業を続け、ミャンマーの雇用を守り、技術移転をして若者たちの将来を支えていきたいと考えている日系企業さんも多いです。共に頑張って参りましょう。

(2022年6月号掲載)

執筆者プロフィール

若松裕子
Japan Outsourcing Service Co., Ltd.(税理士法人Right Hand Associates)ヤンゴン事務所長・税理士。
2014年よりミャンマー駐在。中小企業から上場企業、ミャンマー国内法人まで幅広く事業をサポート。趣味は坐禅。