オミクロン禍の経済活動
~最近の貿易・投資動向~

2022年2月以降、オミクロン株と見られる新型コロナウイルスの第4波がミャンマーに到来しました。軍政発表の新規感染者数によれば、2月22日の3,563人(陽性率10.8%)をピークに減少傾向にあります。この間、多くの在留邦人も罹患しておりましたが、高熱と喉の痛み・咳と闘いながら、回復を果たしております。

経済活動を優先

 新型コロナウイルスの感染拡大により、再び各種制限措置などが採られるのではないかといった心配の声もありましたが、際立った国内での制限措置は採られず、工場や事業会社などの操業に深刻な影響を及ぼす程ではありませんでした。軍政としては、経済活動を優先した形となっています。ただ、抗原検査を行った結果、従業員の半分が陽性であったといったような話があちこちで聞かれました。

 こうした中、日系工場の多くは第4波を乗り切り、今は通常通りの操業に戻っています。特に輸出型企業では、4月中旬の大型連休(水掛祭り)を控え、生産のピッチを挙げています。

貿易は縮小均衡、相次ぐ輸入管理措置

 現在、ミャンマーでは外貨流出を抑えるために、輸入を抑える輸出入の均衡化政策を行っています。2021年10月~2022年2月期の輸出は前年同期比0.5%減の65億ドル、輸入は同5.1%減の63億ドル、貿易収支は1.9億ドルの黒字となりました。

 財別の輸入では、資本財が前年同期比51.3%減の12億ドル、中間財が同29.2%増の27億ドル、消費財が同5.9%増の14億ドル、委託加工貿易の原材料(CMP 材料)は同30.6%増の10億ドルとなりました。注目すべきは、CMP 材料の輸入が増加しており、縫製品等の海外からの発注が戻ってきていることが伺えます。

 現在、貿易を所掌する商業省では、貿易管理措置を強化しており、2022年1月1日から輸入ライセンスの必要な品目として新たに3,070品目を適用し、さらに1月25日に826品目を追加。

 足下では、3月2日から小麦やポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチック原材料など141品目を追加適用。ロシアによるウクライナ侵攻や原油価格の高騰により、価格が高騰しているこれらの品目に輸入ライセンスの取得を義務付けることで、無制限な輸入に歯止めを掛け、外貨流出を抑制する狙いがあるとされています。

中国からの投資が顕在化

 外国からの直接投資件数については、2021年10月~2022年2月期は34件の認可がありました。そのうち18件が中国からの投資で、次いで、香港6件、韓国4件などでありました。前年同期の件数(2月は政変のため許認可会議が開催されなかったため、2020年10月~2021年1月期)は38件であったことを考えると、低級飛行ながらも、ほぼ前年並みの状況となっています。同期の金額は前年同期比21.1%減の5.3億ドルでありました。

 外国からの投資や人の往来が増えないと、国民生活は益々困窮化してしまいます。即効性のある対応策としては、先ずは国際商業便の運航再開を通じた人の往来の回復だと考えています(4月17日から国際旅客便の再開予定)。

(2022年4月号掲載)

田中一史(たなか かずふみ)

日本貿易振興機構(ジェトロ)ヤンゴン事務所長。主にアジア経済の調査や企業の海外展開支援業務を担当。海外勤務は、マニラ事務所調査ダイレクター、サンフランシスコ事務所北米広域調査員、バンコク事務所次長を歴任。2017 年12 月より現職。