3月決算への備え。帳簿、証憑の整理について

 2021年の9月決算及び12月申告がやっと落ち着いたと思ったところですが、今年は、再び2022年3月決算、6月申告がやってきます。現行事業年度は、一旦、10月~3月の半年で区切って、その後は、また毎年4月~3月が事業年度となる見込みです。

 決算に関し、商業税や法人税等の予納がある場合には、期限が水祭り時期と重なりますので、早めに対応しておきましょう。また、昨年もご紹介しましたが、決算にあたり、最低限でも下記の確認は行っておきたいものです。

・実地棚卸・現金等残高の実地確認
・各種税金の予測及び対策及び予納状況の確認
・カーターカー31の取得手配
・債権債務の整理(親子間・取引先間)
・キャピタルゲイン課税対象となる資産譲渡等の確認(廃棄資産もエビデンスを残す)
・来年度の事業計画の再確認
・印紙税の罰金適用の有無
・保存書類の確認

 最近、日本の税法では、電子帳簿保存法が整備されてきており、税務会計の証憑について、紙ベースだけでなく、データによる保存も認められる方向性が強くなっています。これを受けて、「ミャンマーにおいても、スキャンデータなどで証憑の保管を行いたい。できれば大量の紙の証憑を捨てたいのですが、大丈夫でしょうか」という質問を最近よく受けます。結論から言うと、まだ、紙ベースの保管が必要、といえます。

 ミャンマーにおける帳簿・証憑類の保存義務は、2019年10月に施行された「Tax Administration Law」により定められています。保存すべき書類については、IRDのサイトにも記載されており、「sales andpurchase invoices, costing documents, bookings, diaries,purchase orders, delivery notes, bank statements, con -tracts, and other documents which relate to an element of a transaction」とあります。保存期間については、「Part 4 (RECORDKEEPING AND INFORMATION COLLECTION) 20.(C)」において、
A person required to prepare or retain records of a transaction under tax legislation must retain the documents
(1) for a period of seven years from the date on which the transaction took place; or
(2) if longer than the period of seven years, until expiration of the time limit for assessment of tax for a tax period to which the records are relevant.

と定められており、基本的に7年間の保存義務が課せられています。また、タックスクリアランスが終わっていたとしても、これから予定されている実地の税務調査においては、紙ベースによる証憑のチェックが行われることが想定されますので、税務調査がくるまでは、保管していた方が安全といえます。また、監査報告書、総勘定元帳、定款、不動産関係その他重要な契約書書類、申請書、届出書等の控えなど、重要な書類については、永久に保管しておいた方が良い書類となります。

 2022年からの会計におけるIFRSの適用については、税務上、どういう運用になってくるのか、引き続き留意が必要です。動きが出てきた税務について、キャッチアップしていきましょう。

(2022年3月号掲載)

執筆者プロフィール

若松裕子
Japan Outsourcing Service Co., Ltd.(税理士法人Right Hand Associates)ヤンゴン事務所長・税理士。
2014年よりミャンマー駐在。中小企業から上場企業、ミャンマー国内法人まで幅広く事業をサポート。趣味は坐禅。