税金の納付期限に注意

 昨年すでにアナウンスが出されている通り、2022年最初の事業年度は、2021年10月~2022年3月まで、6か月のミニ事業年度となります。先日、決算を締めたばかりなのに再びまた決算・・・と頭の痛いところですが、その後は、4月~3月の事業年度に戻るということですので、この決算が終われば、次回は9月ではなく、2023年の3月となります。

 2021年は、役所がストップしていたため、前半は税務の動きが少なかった年でしたが、9月以降、事業年度の変更や所得税率の引下げといった大型の改正に始まり、1 1月1 6日の計画財務工業省通達No.389(2021年10月1日施行)では、法人税の予納額計算方法の詳細手引き、年明け2021年1月6日には、通信業者等の一部商業税の引き上げ措置など、税制に動きが出てきました。2022年から、本格的にIFRSも導入するというアナウンスは数年前から出されており、未実現為替差損益などの通達が出たりと多少の動きはありますが、個別の事項にかかる条文については、まだまだ不透明な部分が多くなっています。

 8年前、ミャンマーに来て驚いたのは、法律(税法は特に)が、荒いまま突然施行され、その後、民間等からのクレームを受けて、これまた何度も改正があるということ。法律の世界において、「やってみてからもうちょっと考える」ということが起こるということに、衝撃を受けたものでした。日本などは、毎年年末に向けて税制大綱が出され、それが国会に提出されて承認を受け、翌事業年度以降に施行、ややもすると2年後以降に施行されるというスケジュール。よほどのことが無い限り大綱のまま進行します。また、改正においては、しっかり検証して実施され、遡及的に改正など行おうものなら、天地がひっくり返るほどの騒ぎとなります。

 ミャンマー税法の概観に触れ、法的安定性と予測可能性の低い状況というのはまさにこういうことを言うのだなあと、妙な納得をしたものでした。

 また、最近の動向で、注意せねばならないことの1つに個人所得税の罰金の適用開始があります。これまで、数年来、何度も、「期限までに支払わないと罰金」というアナウンスがあった個人の所得税。毎年オオカミ少年の様にアナウンスがされていましたが、実際の罰金の適用事例というものは、ほぼありませんでした。それが、今回、2021年の年末の年度申告時から、ちらほら事例が出てきました。個人給与所得税や、非居住者等への支払いなどにかかる源泉所得税などは、支払日から15日以内に納付を行わなければならないこととされています。税の世界では一般的に、商業税や源泉税といった預り金の要素を持った税金というのは、担税力が高いとされ、厳しい運用が求められます。既に天引きや預かりで納税者の手元に原資が確保されているためです。

 11月の法人税の予納に関する通達では、計算方法に加え、還付の場合の適用条件等について、Tax Administration法の規定を提示して、今年度の予納予定額を超える場合にのみ還付の適用があるといった趣旨が改めて記載されています。預り金的税金の厳罰化、予納の厳格適用、還付の取り扱いなど、これまで以上に厳しい税法の運用が予測されます。外資企業においては、駐在員の個人所得税の額は比較的高額となっていると思います。これについて、期限内納付が出来なかった場合には、10%の罰金(将来的に利息適用も可能性有り)の適用が行われると、かなりインパクトが強いので、動向に留意してください。

(2022年2月号掲載)

執筆者プロフィール

若松裕子
Japan Outsourcing Service Co., Ltd.(原&アカウンティング・パートナーズ)ヤンゴン事務所長・税理士。
2014年よりミャンマー駐在。中小企業から上場企業、ミャンマー国内法人まで幅広く事業をサポート。趣味は坐禅。