2021年の税務会計振り返り

 ミャンマーでの激動の2021年が終わりました。

 振り返ると、長かった様な早かったような気がいたします。ざっくりとこの1年について、税務会計を中心に振り返ってみたいと思います。

 1月は、昨年のコロナ過の影響を受け、申告期限の延長措置がなされました。2020年9月期分の申告は、多くの納税者について、申告納税方式によるものとなりました。コロナ対応策の税額控除や、損金の割増計上が加味され、また、未実現の為替差損益の取り扱いについても新たに通達により方針が示され、これまでの単純な法人税計算から一歩進んだ、税務調整の幕開けといった様相でした。本来12月末日の申告期限が何度か延長され、結局1月末日に落ち着き、弊事務所でも無事申告を完了して安堵していた次の日、政変が起こりました。

 ネットや電話の障害も起こり、またCDM活動により、税務が完全に滞るという事態が発生しました。3月のヤンゴンは町中いたるところにバリケードが張られ移動もままならない状況が続きました。役所に行こうと思っても、車がすんなり通れる道があまりなく、たどり着くのに非常に時間がかかりました。その後、5月くらいまでほとんど役所が機能せず、手続きが止まるという状態でした。タウンシップの税務署に行っても、責任者の方が出てきて、『職員がほとんど居ないから、手続きができません』と言われるような場面もありました。MTOやLTOは稼働していると言っていましたが、やはり同様に出勤者が少なく、業務が滞っている状況でした。

 ようやく5月頃に少しずつ税務署も対応をしてくれる様になってきましたが、職員が交代出勤制の上、依然として全体的に出勤者が少なく、引き続き手続きが滞る状態が続いておりました。この間、印紙税の窓口だけは開いており、また四半期申告などは、メールによる提出、MPUカードやネットバンキングによる納付などで、細々と手続きは可能でした。しかし、納税者側で、税金の納付を一旦見合わせるといった動きも多く見られ、それは一部現在でも続いています。

 6月の終わりから8月においては、コロナの感染の拡大で再び税務も滞りました。この間は、国全体が、連日感染者の対応に追われ、7月17日~9月13日という未曽有の公休日が実施されました。特に持病を持った年配の方は、本当に多くが亡くなりました。弊事務所のスタッフの家族も数名が亡くなり、胸がつぶれる思いでありました。当然、この期間は、役所と連絡がほとんど取れず、業務が滞りました。

 ようやく税務署が再び動き出したのは、この公休日明けからで、滞っていたタックスクリアランスも比較的早く進められるようになりました。しかし、還付事案や清算にかかるものなど、一部時間がかかっているケースも散見されます。

 9月末から10月にかけては、税務について、大きな正式発表がありました。事業年度の変更と税率の引下げです。事業年度は、現在の10月~9月から、再び、2019年以前のように4月~3月に変更されることとなりました。また、法人税は25%から22%に引き下げられ、個人の所得税についても大きく累進税率の引下げがありました。この所得税の引下げについては、主に年収5,000,000~70,000,000ktの人が恩恵を受けるものとなっており、中間層以上にインパクトを与えるものとなっています。

 11月には、これまで不明確であった法人税の四半期申告について指針となる通達が発表され、一部、前期納税実績方式となりました。しかし、還付の的確な実施の有無など、問題は残ると思われます。

 ビジネスを行う上で、困難が多くなった2021年でした。2月以降、最も大きな問題は、金融機関の麻痺状態です。現金の引き出しがスムーズにできない、現物のドルが引き出せない、チャットからドル転が出来ない、これらの状況が長引くことは、外資企業にとって非常に痛手です。1日も早い改善を願います。

 2021年は、ミャンマーの方々の強さと優しさに多く触れた年でもありました。困っているときに、自分よりもさらに困っている人に手を差し伸べる姿勢。この国の持っている素晴らしい美徳に感嘆しました。

 2022年も引き続き不透明な先行きでありますが、希望を持って皆で進んで参りましょう。

(2022年1月号掲載)

執筆者プロフィール

若松裕子
Japan Outsourcing Service Co., Ltd.(原&アカウンティング・パートナーズ)ヤンゴン事務所長・税理士。
2014年よりミャンマー駐在。中小企業から上場企業、ミャンマー国内法人まで幅広く事業をサポート。趣味は坐禅。