2022年も総選挙の実施までは様子見続く

 謹んで新春をお祝い申し上げます。今年も、バイアスのない現地の経済状況や在留邦人の様子などを交えた生の情報を現地から発信していきたいと思います。どうぞ引き続き宜しくお願い申し上げます。

様子見続く2022年
 2021年2月の政変以降、ミャンマーに対する国際世論が厳しい目を向ける中、日系企業の多くは、ミャンマー国民に寄り添い「責任ある投資」を果たすため、当地での事業を何とか継続すべく努力をしているところです。ジェトロにも事業継続に関する考えや日本本社への説得など、様々な苦労話が聞こえてきます。皆さん、一様にミャンマーの一般国民や従業員はこれまで真面目に働き、何も悪くないのに、政変により自分たちの将来や生活が一変してしまった現状の中で、個社の出来うる対応として、雇用の維持や事業の存続可否の見送りなど、出来る限り前向きに取り組もうとしています。事実、日系進出企業数のバロメーターとされるミャンマー日本商工会議所会員数については、政変から間も無く1年が経とうとしていますが、退会する企業は少なく、ほぼ横ばいで推移しています。
 とはいえ、コロナ禍や政変により、事業を拡張する地合いではないため、多くの企業は既存事業を継続しながら、今後の情勢を判断したいといった様子見の状態が続いています。

保護主義的な動きには注意
 2021年は政変以降の金融混乱等を背景に、輸入のための外貨支出を抑制するための各種制限措置が採られました。貿易を所管する商業省は、タイからの陸送による各種飲料やインスタントコーヒー、石鹸、歯磨き粉等の暫定的輸入禁止措置、乗用車の輸入ライセンス発行と新車販売店のライセンス発行を一時的に停止する措置を発動しています。
 また、同省は2021年1月1日から、新たに3,070品目を対象に輸入ライセンスの取得を義務付けています。通達によれば、輸入ライセンスが必要な品目は輸入許可システムの変更に合わせ順次公表するとしており、第一段階として、食品、化粧品・消費財、紙製品、電子部品、建設資材関連商品など、HS コード10桁の3,070品目が対象。従来、2020年の通達により、輸入ライセンスの必要な品目数(ネガティブリスト)は3,931品目でしたが、これに今回発表された3,070品目が追加される形になります。実務上、輸入ライセンス取得のためのコストや手続きの煩雑さを除けば、どのような影響が出るかはまだ分かりませんが、制度の行方を注視していく必要があります。
 一方、中央銀行は引き続き輸出企業に対して30日以内に輸出代金として得た外貨を外国為替公認銀行に市場価格で売却することを求めています。
 新規外国直接投資の大幅減、主要国・国際機関による開発援助の停止、外国人の入国禁止措置などにより、ミャンマーに外貨が流入・増加する可能性は低く、既述のような保護主義的な動きは2022年も続くものと思われます。

ミャンマーの秘境に思いを馳せて
 私事ではありますが、2年前の正月休みにはチン州にあるミャンマーで三番目に高いビクトリア山(標高3,053m)を登りました。昨年の今頃は、カチン州のプータオに行き、ミャンマーで最も高いカカボラジ山の麓をトレッキングしたいと思い、計画を立てていました。結局、コロナ禍でカチン州行きを断念し、ヤンゴンの自宅で1人おとなしくしておりました。今年の正月は、ヤンゴンの日本食レストラン様が提供する美味しいおせち料理を食べながら、ミャンマーの秘境の動画や写真集を見ながら過ごす予定です。ミャンマーには本当に素晴らしい場所、民族、人々、歴史、文化があり、興味が尽きません。

ビクトリア山の山頂

 早く平時に戻り、人々に笑顔が戻り、私も趣味の秘境巡りにどんどん出掛けることができるような日が来ることを祈念しております。

(2022年1月号掲載)

田中一史(たなか かずふみ)

日本貿易振興機構(ジェトロ)ヤンゴン事務所長。主にアジア経済の調査や企業の海外展開支援業務を担当。海外勤務は、マニラ事務所調査ダイレクター、サンフランシスコ事務所北米広域調査員、バンコク事務所次長を歴任。2017 年12 月より現職。