2週間程前からヤンゴンのコロナ状況は急激に悪化しています|Dr.井上のミャンマー新型コロナウィルス最新情報

【コラム】【新型コロナ】 2021721

2週間程前からヤンゴンのコロナ状況は急激に悪化しています。

まず新型コロナの【リスク評価】です。

新型コロナウイルスに感染したらどれぐらいの確率で死亡するのか知っていますか?
資料:新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(速報値 / 日本)

厚労省による6月9日時点での日本のコロナ感染者の統計です。
19歳以下は8.1万人の陽性者がいて死亡者はいません。
20代、30代は28万人の陽性者がいて死亡者はわずか33人です。1万人に1人しか死にません。
40代、50代は20.9万人の陽性者で死亡者は361名です。1万人に17人です。
これに対して60歳以上は陽性者17.6万人で死亡者10,816人です。1万人に610人です。

このようにコロナは60歳未満で合併症がないならば、そうそう死ぬ病気ではありません。59歳以下であっても糖尿病、心臓病などの合併症のある人は要注意です。高血圧はリスクになりますが、高脂血症はリスクになりません。

まず自分のコロナに感染した場合のリスクを正しく評価しましよう。

もちろんコロナに感染すると後遺症などもあるので、感染しないように気を付ける必要があります。
ただコロナが流行っているというだけで集団パニックにならないようにしましょう。

ただし、これは日本にいる日本人の統計です。ミャンマーにいる日本人は医療状況を考慮してこの2倍程度のリスクは覚悟しましょう。ミャンマー人に関しては糖尿病などの合併症が多く、コントロールも悪いことが多いので、日本人よりリスクが10歳分ぐらい高くなると思われます。

では、60歳以上もしくは合併症のある人はどうしたらよいのでしょうか。
一番安全確実なのは現在のミャンマーでは大使館が検討するように要請している日本への帰国です。感染して周囲の人に迷惑をかけることも防げます。
2番目の対策はワクチン接種です。ワクチンを接種すると感染しにくいだけでなく、重症化しにくくなるので非常に有効です。ヤンゴンでワクチンが接種できるのか、どの銘柄が良いかは別に論じます。
3番目は当分の間外出しないこと、他人と接触しないことになると思います。特に若い人は無症状のことが多いので、残念ですがなるべく会わないようにしましょう。

次にミャンマーの感染の【現状分析】です。

実際の感染者数はどれくらいなのでしょうか?私は現在日本にいるので正確な状況は分かりませんので、これはあくまでも計算上の話です。
7月14日にミャンマーの陽性者が7,000人を越え、陽性率も33%でした。死亡者数は145人でした。
陽性率が高いのは、実際に症状がでている人だけを検査しており、陽性者の濃厚接触者を検査できていないことを意味しているので、検査数をもっと増やせれば、陽性者が実際にはもっとでることを意味していると思われます。
ちなみに日本の最高は1/8の7,800人で、この時の検査数は63,000件でしたので、今回のミャンマーでの陽性者7,083人、検査数21,352件と比較する検査数の不足がわかりやすいと思います。

十分な検査ができるようになると少なくとも今の2倍程度の陽性者がみつかると思われます。2倍として1日15,000人と推定すると、現在は第2波で最高の時の約10倍の感染者がいるのだと推定されます。
1月の日本の陽性者数が7,800人になったときの入院治療を要する患者数は約2週間後に7万人になりました。ミャンマーの現状ではおそらく15万人ぐらいの患者が入院治療を必要とすると推定されます。
1月の日本の重症者数は1,000人だったので、現在のミャンマーで重症治療が必要な患者は2,000人ぐらいではないかと推定されます。

ミャンマーは昨年末の第2波の時で1日の陽性者が最高1,500人だったときの治療中患者数(治療+隔離患者数)が約2万人でした。このときはサッカー場に隔離治療施設を臨時で作ったり、集合住宅を隔離施設にしたりしてベッド(部屋)を確保していました。今回の患者数がその時の10倍だとするととてもこれだけのベッドを準備することはできません。
すると今現実に起きていることなのですが、陽性と判定された患者が入院も隔離もできずに自宅に戻されることになります。ミャンマーは日本と比較すると大家族で住んでおり、部屋数も少ないので患者の隔離は困難で家族内感染が増えるだろうということは容易に想像できます。

ミャンマーはもともと医療資源が少なかったのに、クーデターに対するCDMのため働いている医療従事者が減っていました。そこに今回の感染爆発ですからもう完全に医療崩壊です。酸素が手に入らない、満床で入院できないなど、必要な医療が受けられない状態にあります。
日本の医療が切迫しているという脅かしとは全く状況が違います。

今後の見通しは全くたちませんが、9連休にするなどの対策が功を奏したとしても、感染者数が減ってくるのに2週間程度はかかると思われます。当分は陽性者数、死亡者数が増加すると予想されます。

ヤンゴンの皆さま、くれぐれも気をつけてください。

執筆者プロフィール

井上 聡(いのうえ そう)
Yangon Japan Medical Centre院長
慶応義塾大学医学部卒業。外科専門医、消化器内視鏡専門医。

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