今月のKEY PERSON

Diamond Rental Myanmar 横田圭右 Managing Director

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未だ未整備なインフラ環境の多いミャンマーで重要な役割を担う建設事業。
それを陰から支えるのが、建設機械のレンタル事業である。
2015年に設立したDiamond Rentalはどのようにして事業を拡大させていったのか?
事業戦略から今後の展望まで横田MDに語ってもらった。

豊富な建機、サービス、人材育成で ミャンマーの建設現場を支える

建機レンタルの3か国展開
現場に必要なすべてを揃える

 三菱商事、日本の大手建機レンタル企業であるレンタルのニッケン、そして地場の建機販売代理店のMyanmar Kaidoの3社が出資し、2015年に設立したDiamond Rental Myanmar。ヤンゴン市内の複数の商業施設建設プロジェクトのほか、港湾インフラ開発、橋梁建設、鉄道インフラ整備事業などでサービスを提供し、建機レンタル企業として順調に実績を積み重ねてきた。
 2013年頃より、インフラ関連ほか建設部門での発展が見込まれるASEANでの事業を推し進めるべく、親会社の三菱商事はインドネシア、タイ、そしてミャンマーの3か国で拠点設置を計画。当時、F/Sのメンバーであった横田氏は4、5回ミャンマーを訪れ、その高いポテンシャルを感じていたという。そして2015年に同社が設立、2年後の17年に横田MDが着任した。「繁忙期や閑散期など需要に応じた機械の行き来など3か国展開によるシナジーがあり、ASEANのネットワークを生かせる体制になっています」。
 強みは、当地で同社しか所有していない特殊な機械のほか種類豊富な高品質の建機、顧客に寄り添うきめ細やかなサービス、日系企業の矜持である安心・安全を実践するオペレーター。日本で約4,700種類、約105万点の建機を有するレンタルのニッケンのノウハウを最大限活用し、油圧ショベル、クローラクレーンといった重機を始めフォークリフト、モジュラーハウスやジェネレーター、タワーライトといった建設現場におけるあらゆる製品を揃え、高品質のレンタルサービスを提供する。前述した、ミャンマーでは同社のみが所有する線路上を走行移動できるミニクローラークレーンや同油圧ショベルはわざわざタイで加工を施し、当地で使える設計にするなど顧客ニーズに応える労力も惜しまない。「ODA事業の鉄道インフラ整備事業ではヤンゴンから遠隔にある現場近くにオフィスを作り、何かあればすぐに対応できる体制を築いています。我々が取り扱う機械はアフターケアが大事なのはもちろんのこと、ミャンマー特有の強烈な紫外線や高温、雨季の環境下では日本以上に故障することも多く、レンタルのニッケンが得意とする予防整備が欠かせません。機械+ヒトが絶対なんですよ」と語る横田MD。

事業の根幹となる人材育成
安全意識の高さが評判に

 さらに同社が注力するのが人材の育成。建機レンタルは基本的に機械とオペレーターがセットであるため、双方において高いレベルが求められる。地場パートナーのMyanmarKaidoの経営者は元々日本で建機を学んできた背景があり、日本流の安心・安全の重要性を十分に理解する。そのため同社の本社には研修センターがあり、オペレーターは座学からエンジンを分解するなどの実践的な教育を受け、技術者として高いスキルと知識を蓄えた後に現場に入る。横田MDは「建機レンタル企業は事業領域が広い。クレーン、車両といった機械から現場に設置するモジュールハウスの組み立てや配線もあり、膨大な知識が必要となります」と説明する。
 現在、顧客の約8割を占めるのが日系であり、ゆえに安全基準や規律も厳しく、同社ではスタッフに時間を守ることの大切さやハプニングが起きたときの報連相を徹底している。そうした結果、付き合いの長い顧客からオペレーターを高く評価され、安全講習などの依頼もあったという。また、これまで決して安全基準が高いとはいえなかったローカルの建設会社も最近では意識が高まりつつあり、そうした引き合いも増えてきた。「安全面でミスが起きると企業は大きな損失となるので、ローカルの大手にも安全講習を行ったこともあります。こうした動きは、弊社にとってのチャンスだと捉えています」。
 今後の展開については、さらなるサービスの向上と事業拡大のために東西経済回廊での建設現場、ミャンマー第二の都市マンダレーでの拠点設置も視野に入れている。
 現在、ミャンマーは混沌とした状況ではあるものの、中長期的に発展するのは確実であり、都市需要も伸びていくだろう。さらに現状は土木関係などの案件が多いが、成長とともにエネルギー関連も高い可能性を秘め、プラント関連の現場において同社は日本での実績も十分で、そうしたニーズにも応えることができる。「インフラ事業にドライブがかかれば、一気に需要が高まるので準備をしていきたい。エネルギー関連事業は安全基準が非常に高く、そうした基準をクリアできるような企業しか参加できません。我々はインドネシアでの実績もありますし、一段高いセグメントでの事業でもニーズに応えられるようにしていきたいですね」。

横田圭右[Yokota Keisuke]

1968年、神奈川出身。京都大学卒業後、91年三菱商事に入社。96年より建設機械担当となり、98年~2004年まで米国・ヒューストン駐在、中南米を担当する。
2017年5月にミャンマー駐在となり、MDに就任