今月のKEY PERSON

<2020年3月号>フクダ・アンド・パートナーズ 福田哲也 代表取締役社長

バックナンバーはコチラ

現在、ヤンゴンのビジネスマン界隈で注目の企業といえば、フクダ・アンド・パートナーズ。
建設・不動産の高い専門性を有し、物流施設の設計監理、プロジェクトマネジメント業務のスペシャリストが仕掛ける施設開発の1棟目(B棟)がタケタにオープンした。
この国での事業や展望など、福田社長に熱い思いを語ってもらった。

福田社長の情熱が詰まった開発 施設作りのプロによる物流不動産事業

設計事務所“物流施設づくりランキング”
日本国内2位、タケタで新施設を開始

 創業以来19期増収増益、物流施設作りに強みを持ち、日本における設計事務所の物流施設設計部門の売り上げで国内第2位の「フクダ・アンド・パートナーズ」。土地選定から設計、工事監修、プロジェクトマネジメント(PJM)、プロパティマネジメント業務(PM)まで、ワンストップでサービスを提供するのが特徴で、国内事業の約9割が物流施設事業で構成。超大手外資ECサイトのほとんどの物流倉庫に同社が携わるほか、多くの大手上場企業を取引先として有し、年間の工事費取扱高は6,000億円を超え、その確固たる技術力や経験値は市場に広く認知されている。

 東南アジアに拠点を持つため、調査目的で福田社長が2012年に初めてミャンマーを訪問。日本人に親しみを持ち、温和なミャンマー人の国民性に一目惚れし、一方でビジネスとしても高いポテンシャルを有していると判断し、進出を決意した。「ビジネスという観点以上に、この国を好きになりました」と福田社長は振り返る。

 2014年に同社を設立、サービスアパートの設計監理業務やトラックの整備工場、ティラワ経済特区(SEZ)やミンガラドン工業団地での建設PJMなどの業務受託を経て着実に成長。さらにティラワSEZでの大手物流施設でのプロジェクト完了と同時に、別の物流企業から案件を受注するなど得意領域を存分に発揮してきた。そして、昨年2019年9月に同社の知見を集結させた3温度帯物流倉庫とコ・ワーキング・オフィスの機能を持った「L . L . T o w nTharkayta B棟」(FLP Tharkayta社運営)をオープン。ネーミングの「L.L.」はライフラインと、ロジスティクスを意味し、かつて東日本大震災で過酷な現場を経験した福田社長は「食品等の物資を届ける物流とは、まさにライフラインだということを痛感しました」と語る。物を届ける機能を持ち、地域の生活を支え、地域に貢献する施設でありたいという思いから「Town」という言葉を組み合わせ、「 L.L.Town」と名付けた。

 ティラワSEZにアクセスしやすいタケタ地区に位置し、市内の中心地であるダウンタウンとほぼ中間というロケーション。ヤンゴン市内への小分け配送なども可能とし、3温度対応の冷蔵冷凍施設を完備、今後高まる食品物流の需要も見込む。また、コ・ワーキング・オフィス・スペースを有し、24時間セキュリティ、ヤンゴン中心部よりも低賃料、短期契約可能といったことに加え、リフレッシュスペース、100台以上の駐車場、180名収容可能な大会議室を有し、通勤のためのシャトルバス運行サービスも予定している。

ミャンマーだから担える役割
目指すは顧客満足度の向上

  「5年前からタケタに注目していました。ティラワは大規模で最適な物流拠点ではありますが、どちらかというとダウンタウンの近くに住まれているミャンマーの方々や店舗に、レスポンスよく物を届ける拠点を作りたいという思いが強かったです」。将来的には「L.L.TownTharkayta」に教育施設、職業訓練学校、診療所、飲食店、コンビニなどを誘致し、地域住民に役に立つ施設や街にしたいという。「以前、丸山大使が『国と国の親密なつながりを、民間企業同士の事業のつながりに広げてもらいたい』とお話されていましたが、僕らはまさに日本の中小企業とミャンマーの企業が一緒に事業を行い、その意義を感じています。こうした事例をたくさん作ることで、日緬両国の交流につながっていけばいいと考えています」。

 常駐こそしていないが、福田社長は毎月必ずミャンマーに来て、寝る間も惜しんで業務に従事し、それだけこの国に懸ける思いは強い。「常駐ではないので回数を増やすしかないんです。そうじゃないと常駐されている方に到底追いつけない」。あえて複雑な戦略は立てていない。顧客の満足度をいかに上げるかに注力し、そのための「迅速対応」「品質の向上」「顧客の課題に徹底的に向き合うこと」を追求。そうした小さな積み重ねが事業や業務の差別化となり、顧客の信頼を勝ち取れると福田社長は考えている。

 「僕は長い目でアジア、そしてミャンマーを見ています。『ミャンマーで知見があるのはF&P』と言われれば、お客様に頼りにされるじゃないですか。タイやベトナムではすでに競合が多く、僕らの役割は限られる。であれば、今は苦労をしながらも大きな役割を担えるようにした方が会社としての未来もあると信じているんですよ」。

 ミャンマーに対する熱い思い、この国に貢献したいという情熱、中小企業だから強みとなる攻めの姿勢と機動性。福田社長の気持ちを体現した同社の事業が、この国の成長の一助となることを願ってやまない。

福田 哲也[Fukuda Tetsuya]

Profile
1966年、千葉県生まれ。日本大学卒業後、1989年に大手ゼネコンのフジタに就職。東北支店を経て、本社営業本部で物流・生産エンジニアリング部を立ち上げ、3年間で売上100億円の事業部に育て、当時34歳で最年少部長に就任。2001年に退社し、フクダ・アンド・パートナーズを設立。代表取締役社長に就任し、現在に至る。