今月のKEY PERSON

<2019年12月号>Chiyoda & Public Works Managing Director 鈴木 靖 氏

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日本が誇るエンジニアリング会社である千代田化工建設。
ミャンマー建設省と合弁を立ち上げ、プラント・工場建設の遂行、プライムヒルを運営するなど着実に実績を積み重ねてきた。同地でMDを任される鈴木氏に今後の展望を語ってもらった。

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建設省と合弁設立、
高い技術力とプロジェクト遂行能力が最大の強み

エネルギー、化学、環境、省エネ、産業設備、ライフサイエンスなどのプラント施設、工場の事業計画・設計・調達・建設・試運転・運転・保守まで行う総合エンジニアリング会社である千代田化工建設。石油・天然ガス分野で培った技術を脱炭素社会構築に向けて活用、プロセス開発、触媒開発、そして再生可能エネルギーと合わせたクリーンな水素を安全に貯蔵・輸送するなどの高度な技術を有する。

 1997年7月、ミャンマー建設省との合弁会社Chiyoda & Public Works(CPW/千代田60%、建設省40%)を設立し、大手日系企業が多数入居するプライムヒルの管理・運営会社としても広く知られている。

 進出後すぐにサガイン管区モニワ地区(Monywa)での銅精錬プラント建設工事を受注、続けて化学肥料プラントの省エネ改修工事など、この地におけるエンジニアリング事業での実績を積み重ねてきた。

 ミャンマーは2011年の民主化以降、ヤンゴン及びティワラ経済特区(SEZ)を中心に投資が進み、それを支えるエネルギー供給、インフラ整備が喫緊の課題。同社では、空港向けのジェット燃料の貯蔵設備の近代化、籾殻を活用したバイオマスガス化発電実証プラント建設、ビール工場の設備・建屋増設など、さまざまな産業設備案件も手がけ、さらにマンダレー市の都市計画や各地での経済特区開発計画を政府に提案、大型エネルギープラントの立地調査やフィジビリティスタディといったコンサルティング領域も行ってきた。

 2017年にISO9001を取得、50万時間の無事故によるセーフティアワード受賞、ミャンマー省庁での技術研修、2018年にはプライムヒルの入居率100%を達成するなど、さまざまな側面からこの国に貢献。現在は、その類まれなる技術力・プロジェクト遂行能力と合弁先である建設省との強い関係から、同省のプロパティ(所有物)を活用した開発を視野に入れ、「再生可能エネルギーを活用した物流設備や商業設備、将来的にはスマートシティの構想などの余地があります」と話すのは、元々エンジニアでもある鈴木MD。ミャンマーでは送電網の確立も未整備なことから、オフグリッドエリアでの再生可能エネルギーの最適化導入案件の開発も手がけたいとしている。「電力が足りないのはご存知の通り。ただ、大きな案件ではなかなか実現しづらいため、既存のものを生かしながら現地のニーズに合ったユーティリティ、再生可能エネルギー、蓄電池、EMS(Energy Management System)など、エンジニアリング会社の知見を生かし最適な組み合わせを提案していきたいです」。

エネルギーと環境の調和
あらゆる産業で貢献

 日系企業が日々恩恵を受けているプライムヒルの賃貸事業においては、さらなるサービスの向上を掲げ、シュエダゴンパゴダを明治神宮に見立て、プライムヒルを東京の同潤会アパートのようなアメニティの豊富な存在とするべく、低層でのオープンスペースを生かし、新たな付加価値を見出したいと意気込む。

 さらにAI領域の可能性にも言及し、「この国ではハードとソフトのアンバランスが特殊。ハードに比べて、ソフトの拡張性が早い。ミャンマーには若くて優秀なITエンジニアが多く育っており、プラントや工場でもAIを活用することで生産効率の向上、省エネの最適化などに生かすことができ、活躍の場も広がるはず」と話す。さらに技術力に注力するという観点から、同社ではヤンゴンテクノロジー大学などの有望な大学にコンタクトし、スタートアップ企業へのスペースの無料提供なども視野に入れている。

 設立当時、十数人だったスタッフも事業拡大とともに増員。今ではエンジニアを中心に100人を超える体制に成長した。プロジェクト経験の豊富なスタッフが充実し、プライムヒルの自社運営で培ったO&Mノウハウを持ち合わす。これからも建設省とのJVという強みを生かし、日本本社との連携を強め、当地のニーズに合わせたビジネス展開を目指す。

 「決して人件費の安さだけではない魅力がミャンマーにはあり、マーケットの成長は確実。そのときには、あらゆる裾野産業も拡大し、弊社にもチャンスが出てきます。また、ミャンマーの方は環境への意識が高く、産業の発展とともに環境との調和が不可欠になるはず。大きなEPC案件(設計、調達、建設)ばかりを手がけている印象を持たれますが、それだけにこだわらず、規模の大小に限らずミャンマーに貢献できる新しい事業を見つけていきたいと思います」。

 日本が誇るエンジニアリング会社の躍動が、ミャンマーの発展に寄与することを願ってやまない。

鈴木 靖 [Suzuki Yasushi]

Profile
1964年生まれ、東京都出身。東京農工大学卒業後、千代田化工建設に入社。産業設備プロジェクト部配属後、国内の工場、遊戯施設の建設、メジャーオイル会社の中国でのプラント建設に従事。インドネシアの工場建設、再生可能エネルギー関連でチリでの開発プロジェクトに携わる。2018年5月に来緬し現職。剣道教士七段。