今月のKEY PERSON

Tokyo Marine Nichido 石塚 直人|Nippon Life Asia Pacific 桑畠 滋

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東京海上日動と日生、100年を超える長い歴史で初めてとなる協業。長い時を経て、ついにミャンマーでは保険市場が外資に開放、両社は有力保険会社のGGIと合弁を設立した。この地での保険の可能性とは一体どのようなものなのか?
 今後の展開も含めて、ミャンマーでの保険の未来について語ってもらった。

国内最大手生損保による共演 保険未開の地でともに事業開始

平均成長率は驚愕の44%
急成長が見込まれる保険市場

 東京海上日動火災保険(以下東京海上日動)によれば、ミャンマーの損害保険市場は100億円。他方、生命保険市場は、損害保険市場の10分の1程度と見込まれており、国内における保険の対GDP普及率は生・損保を合わせても、2015年時点でわずか0.08%と、1人当たりGDPが同程度のカンボジアやラオスと比較しても低い。また、インフラとなる関連法規・規制、会計制度が未整備であることに加え、保険人材の育成や商品の近代化など、保険業界における課題は山積している。

 一方で、保険市場については、長年ミャンマー保険公社による1社独占状態が続いていたものの、2012年の民間への保険市場の開放以降、5000万人を超える豊富な人口を背景に、急速に拡大しており、過去5年間の平均成長率は44%にも上る。

 さらに2019年10月には、保険市場の外資開放が実現される見込み。損保市場は、東京海上日動、損害保険ジャパン日本興亜、三井住友海上の日系3社が現地企業との合弁会社を設立し、念願であった市場へ本格参入。生保市場は、日本生命保険(以下日生)、太陽生命の日系2社およびタイライフが現地企業との合弁会社を設立し、さらにAIA、プルデンシャル、第一生命など5社が100%子会社を設立し参入し、ローカル企業と凌ぎを削ることになる。

 とりわけ高い注目を集めているのが、有力財閥・シュエタングループ傘下の保険会社であるGrand Guardian Insurance(以下GGI)。GGIは2012年の設立以降、生損兼営の形で事業を営んでいたものの、今般の外資開放を背景に両事業を分離し、損害保険会社は東京海上日動、生命保険会社は日生と合弁会社を設立、マーケットリーダーを目指す。東京海上日動、日生の両社は、言わずもがな日本国内において業界のリーディングカンパニーであるが、パートナーを通じて協業するのは両社の100年を超える歴史の中でも初。長い歴史に裏付けされた保険のリーディングカンパニー2社が有力財閥と組み、ミャンマーの保険業界の発展をいかに主導していくかは、関係者以外からの関心も高く、今後の動向が注目される。

 両社のミャンマーでの足取りについて触れたい。東京海上日動は1997年にヤンゴン事務所を設立し、ミャンマー保険公社を通じた保険のアレンジ、2015年に認可されたティラワ経済特区でのサービスの直接提供を行い、今回の外資規制緩和への準備を進めてきた。一方、日生は2018年に保険市場の外資開放を見据え、生保市場の調査の深化、合弁パートナーの発掘を目的に駐在員事務所を設立。保険業界では最後発の事務所設立だったが、結果的には最有力パートナー候補であったGGIとの合弁設立に至った。

 「地場の保険会社を調査した結果、企業哲学・社風も含めてGGIがベストパートナーだと判断しました。日生さんとともに、お客様にとってワンストップにサービスを提供できる体制を構築し、シナジーを発揮できればと考えています」と話すのが、東京海上日動ヤンゴン支店の石塚首席駐在員。また、日生の桑畠事務所長は「パートナー選定にあたって、東京海上日動さんがGGIとパートナーを組んでいたのが、本社にとっての安心材料の一つとなったのは事実。東京海上日動さんとは、両社一体となった商品、サービスの提供を通じて、他社に真似のできない価値を顧客に提供することに加え、組織運営においても互いの長所を取り入れながら切磋琢磨していきたい」と語る。

損保から広がる保険事業
安心への需要は成長の証

 保険の普及は、今後のミャンマーの経済発展に欠かせないインフラであることは間違いない。GGIが有している24拠点をベースに、今後は全土への代理店網の拡大が課題。他国のように、銀行や自動車ディーラーが代理店として保険を販売できるようになる日も近いとされている。

 今後の展開について、石塚首席駐在員は「進出日系企業への一層のサポートはもとより、代理店ネットワークを通じ、ローカルリテールマーケットも含め、全方位で事業の拡大を目指したい」と説明。桑畠事務所長は「当面は、旅行保険や農家向けの定期保険であるファーマー保険に加え、企業様向けの団体定期や医療保険、銀行窓販を通じた養老保険や学資保険等が主力になると考えています。一方、本社の強みは、Face to Faceによる対面販売。インドでも、日本のモデルにならい、独自チャネルの立ち上げに成功しており、この国においてもぜひ根付かせたいですね」と胸を張る。

 日本の大手損保会社と生保会社の越境タッグによるミャンマーでの事業開始。保険の近代化は新たな投資への呼び水となり、ミャンマー国民にとっては将来への安心につながる。経済成長とともに安心に対する需要は高まっていく。日本を代表する保険会社に懸かる期待は想像以上に大きい。

石塚 直人 [Ishizuka Naoto]

Profile
1970年生まれ、神奈川県出身。湘南高校、東京大学を経て、92年に東京海上火災保険(当時)に入社。10年以上にわたり、航空保険分野のスペシャリストとして従事。その後、ドイツ・マレーシアの海外駐在も経験し、2018年ヤンゴン事務所首席駐在員に就任。

桑畠 滋 [Kuwahata Shigeru]

Profile
1982年生まれ、大阪府出身。高槻高校、慶應義塾大学を経て、06年に日本生命保険に入社。ニッセイ基礎研や財界対応チームにてマクロ経済分析業務に従事。2016年よりシンガポールにて出資先の経営管理やヤンゴン事務所設立業務に従事し、2019年ヤンゴン事務所長に就任。