今月のKEY PERSON

<2019年9月号>ICT Star Group Myanmar Managing Director 京 淳一 氏

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設立当初40名のスタッフがわずか3年で270名までに成長。事業領域も年々拡大し、ついにはAIやロボット領域にも着手した。生産性と効率性の向上を実現するオフィス構築のBtoB案件増加を目指し躍動中のiSGMトップ、京MDに未来の展望を聞いた。

オフィスのワンストップサービス ミャンマーNo.1のIT企業を目指す

離職率7%の優良企業
スタッフは年々倍増

 NECグループのネットワーク通信工事およびシステムインテグレーションの中核会社であるNECネッツエスアイ社、ミャンマーのTMTrading社、GUSTO社が2016年に設立したICT Star Group Myanmar(iSGM)。11年の民政化以降、通信インフラの需要が高まり、携帯電話基地局や太陽光発電設備の設置などのICTインフラ整備を行いながら、日本政府のODA案件も含めた幅広い投資拡大が見込まれることから、合弁の設立に至った。

 年々、事業領域は拡大し、オフィス構築から設備改善、ソフトウェア開発、プロジェクト管理AIやロボット開発といった分野まで広げ、重要課題としてミャンマー人スタッフの育成を推し進めている。ソフトウェア開発では、自社ソフトと日本向けのオフショアも手がけている。

 代表を務める京MDは、1991年にNECインターナショナルトレーニングに入社し、長年にわたり研修部門の講師として活躍。世界40ヵ国以上の現地スタッフにITの知見を伝えてきた、いわば人材育成のプロフェッショナル。事業の基本方針は「ローカルスタッフによる運営」であり、開業以降、京MDは何よりも人材育成をビジネスの中心に据え、設立当初はわずか40名だったスタッフも3年経過した現在では270名までに増強。離職率はわずか7%であり、マネージャー層も着実に増えている。「民主化が達成され、ミャンマーの学生たちを見て、なんとか彼らのサポートをしてあげたいという思いがありました。同時に、ミャンマーの発展を考えたとき、彼らが必要となるのはわかっていましたし、多くのエンジニアを育て、あらゆる経験をさせたいと考えて事業を立ち上げたわけです。基本的に新卒の学生しか採用しないため、大変だったのは事実です。お客さんのケア、納期の大切さの認識に違いがありましたので、イチから丁寧に教えてきました」と語る京MD。

 設立当初、営業からオペレーションまですべての事業を京MDが行わなければならなかったが、2年後にはオペレーションを任せられるようになり、3年が経つと営業部も安定してきた。ローカルスタッフ育成のキーワードとなったのは「責任感を植え付けること」。例えば、50人のプロジェクトにおいて1人でも作業が遅れれば、49人が迷惑を被ることとなる。コンプライアンスについても、一人の過ちが全体に影響を及ぼし、「100−1=0」となるといったことを何度となく伝え、一方で努力するほど結果的に自分のためになるということも教え、当事者意識を育むことでスタッフと会社が成長していった。

ITを使ったオフィス提案
最新技術の開発にも意欲

 現在、注力しているサービスが、Empowered Office(エンパワードオフィス)というもの。これは空間とICTを融合させ、社内データのクラウド化、働き方の見える化、RPA、在席状況の把握や電力消費を抑えるオフィスIoTなどを導入することで生産性と効率の向上を目指す。テクノロジーの導入だけではなく、仕事がしやすい導線を確保する内装デザインから土木作業、什器の購入、ネットワーク構築から保守管理、さらに自社用の管理ソフト開発までもワンストップで行えるのが同社の強みで、オフィス設立の川上から川下までのコンプリートサービスにおいては他の追随を許さない。

 顧客の8割がローカル企業だが、今後は日系企業の案件獲得を目指し、スタッフへの毎朝の日本語レッスンや日本語検定のテストを義務づけ、将来的には日本人営業の採用も視野に入れている。話題のAI開発においてもすでに着手し、データ構築のための音声認識や画像処理などの研究・検証を行い、ビッグデータの解析においてもGoogleが認定するクラウドエンジニアを、ミャンマーで一番抱えるというから、未来への布石もすでに打っている。「Googleのビッグデータを分析するエンジニアは世界中で不足し、弊社ではそうしたスタッフを現在選考中です」と京MD。

 マネージャー層を育てながらスタッフを順調に増やし、3年後には現在の倍の500人以上、5年後には3倍の800人超えも視野に入れている。ミャンマー人のエンジニアがすでに日本で評価が高まりつつあり、日本においては労働不足になることから、彼らのポテンシャルは計り知れず、人材そのもののニーズが高まることも必至だろう。

 ASEAN全土をマーケットと捉え、ミャンマー初の付加価値の高いIT企業という立ち位置を確保し、将来的には「ミャンマーNo.1のIT企業」の実現を目標に掲げている。“ミャンマーNo.1のIT企業”がASEANで躍動する姿が見られることを願ってやまない。

京 淳一 [Kyo Junichi]

Profile
1962年生まれ、マンダレー出身。マンダレー工科大学卒業後、85年にMPT入社。日本での語学留学を経て、91年にNECインターナショナルトレーニングに入社。世界40ヵ国以上で研修の講師として活躍する。2016年、合弁会社ICT Star Group Myanmar(iSGM)を設立、現在に至る。