今月のKEY PERSON

三菱商事 ミャンマー総代表兼ヤンゴン駐在事務所長 真野英俊 氏

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“Yoma Central”をはじめとする不動産開発のみならず、マンダレー空港運営や自動車販売、多数のODA案件など、三菱商事におけるミャンマーでの事業領域は実に幅広い。同社にとって、この国はどういった位置付けなのだろうか?
総代表を務める真野氏に語ってもらった。

重点市場ミャンマーで多角的な事業 日本を代表する大手総合商社

大規模案件に次々と参画
中でも注目は都市開発

 国内及び海外約90の国・地域に200超の拠点を持ち、約1400社の連結対象会社と協働し、ビジネスを展開する三菱商事。企業理念として掲げる三綱領「所期奉公」「処事光明」「立業貿易」は、企業理念の規範として広く知られている。同社は、エネルギー、金属、機械、化学品、生活産業関連の製品販売・製造や、資源開発、インフラ関連、金融、新エネルギー・環境分野における新しいビジネスモデルの構築や新技術の事業化など、国内外のネットワークを活かし、広範な分野で多角的に事業を展開してきた。

 ミャンマーには1954年に拠点を開設。民政移管後人員規模が急拡大し、2012年1月当時は駐在員1名のみだったのが、事業拡大にともない、19年2月の段階で研修生を含めて47名まで増えた。この地での主な事業は、総合商社である住友商事、丸紅や日本政府とともに推進してきたティラワ経済特別区(SEZ)の開発、ガス田権益への投資、ブリヂストンのタイヤ販売・マーケティング支援、エレベーターの販売・保守、マンダレー国際空港の運営、合弁会社「ルビア」による食糧関連事業、建機レンタル、三菱自動車&いすゞ車の販売、ヤンゴン都市再開発、即席麺(Wah-Lah)製造・販売、総合病院の設立・運営、ティラワ港での食糧バルクターミナルなど、いずれも話題となった案件ばかり。さらに鉄鋼や樹脂、紙おむつ、食品、繊維製品など商社ならではのトレーディング、円借款案件2件、無償資金協力案件16件(無償資金協力案件は2012年以降、全体案件数の約3割を受注)など事業領域は実に幅広い。

 特に注目されているのは、2016年から着工している“YOMA Central”(別名ヤンゴン丸の内開発)ことヤンゴン都市再開発。市内中心部の大規模開発であり、総事業費は実に約7億ドル。オフィス、ショッピングモール、コンドミニアムなどの開発により、発展を遂げるヤンゴンを象徴する一大スポットとなるのは確実であり、21年の竣工を目指す。

注力する複合都市開発
CSRでも多大な貢献

 昨年11月、同社はシンガポール系政府投資会社・Temasek Holdingsの子会社であるSurbana Jurong社と業務提携し、アジア各国で複合都市開発を推し進めると発表した。対象国はベトナムやフィリピン、インドネシアなどとともにミャンマーも含まれ、具体的な内容としては商業施設、オフィス、住宅やホテル、病院などに加え、インフラも併せた大規模な都市開発の実現を目指す。「ミャンマーでの複合都市開発は、弊社の戦略とも合致しています」と話すのは、日本国内でも天王洲や品川駅東口プロジェクトなどの事業を手がけてきた真野総代表。

 すでに同社は前述したティラワSEZやYOMA Centralといった開発事業への知見を蓄え、それに加えて建機レンタルやエレベーター、トラック販売といったビジネスへのシナジーも視野に入れる。「かつて商社はトレーディングが主業でしたが、その後は事業投資、現在では事業経営という領域に入っています。目指すものは『創意工夫により、新たなビジネスモデルを構築し、自らの意思で社会に役立つ事業価値を追求していくことで、経営能力の高い人材が育つ会社』。ヤンゴンでもいくつかの新たな案件について準備をしている段階です」。

 また、CSRにおいても同社のミャンマーへの貢献度は大きい。在住者であれば目にしたこともあるかもしれないが、シュエダゴンパゴダへの寄付、イエジン農業大学への奨学金供与、公益財団法人オイスカへの支援、国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS)傘下のThe Livelihoods and Food Security Fund(LIFT) に民間企業として初めて出資するなど、社会貢献についても多岐にわたる。「三菱商事が、注力している国の一つがミャンマー。まだ課題は多いですが、政府の投資環境整備が進んできたこともあり、複数の日系のコンサルティングファームから、昨秋より目に見えてミャンマーへの進出などの相談件数が増え忙しくなっているとも聞いており、日系企業の新規進出・投資の動きが加速するのではないかと期待しています。2020年には選挙もあることから、現政権が進めてきた政策の総決算を行う今年、来年は大きなチャンスだと捉え、案件を増やしていきたいですね」。

▲食品会社ルビアと日清食品が協業し製造・販売する即席麺「Wah-Lah」。2月3日、ヤンゴン市内で行われたジャパンミャンマープエドーに出店し、多くのミャンマー人が関心を寄せていた。

真野 英俊 [Mano Hidetoshi]

Profile
1965年、大阪府出身。京都大学工学部を卒業後、89年に三菱商事入社。国内不動産開発部門に配属となり、天王洲や品川駅東口などの大規模な不動産開発に携わる一方、同社本社ビルの建設事業をサポート。13年に収益不動産開発部長、16年に国内不動産開発部長に就任。2017年4月、海外初駐在がミャンマー。18年4月より現職に就く。