【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2015年12月号>ミャンマー連邦共和国 建設大臣 チョー・ルイン 氏

今回のテーマ:ミャンマーのインフラ整備をどう進めるか

ミャンマー連邦共和国 建設大臣
1947年、エーヤワディ地方ミャウンミャ生まれ。ラングーン工科大学(現在のヤンゴン工科大学)で土木工学を専攻し、1971年に卒業した。翌1972年から、建設省傘下の公共福祉局に勤務。2011年に副大臣に就任、2012年から現職。

官民で戦後復興 日本は理想の国

永杉 本日は大変お忙しい中、対談の機会をいただきましてありがとうございます。
ミャンマー連邦共和国さて、大臣は7月に日本を訪問されています。日本については、どのような感想をお持ちですか。

チョー・ルイン はい、今年7月の大統領訪日の際に同行しました。これまでに5回ほど訪問しています。1987年には、日本で2カ月間の研修を受ける機会がありました。日本は、ミャンマーにとって理想の国です。戦後の何もないところから国民が一丸となり頑張り、国もそれを支援し発展したことを知り、ミャンマーが学ぶべき点が多くあると強く感じました。
我々が期待しているのは、日本の技術です。例えばミャンマーにはトンネルがないのですが、作りたくても技術と資金がないのです。トンネルやモノレールなどまだミャンマーにはない技術を日本から学びたいと思います。日本政府の支援や、金融機関からの援助はとてもありがたいです。無償資金協力による新タケタ橋の建設もあり、非常に感謝しています。
インフラ整備を最優先 JICA からも手厚い支援

永杉 日本人はミャンマー人のことがとても好きです。草の根レベルでも、心から支援をしたいと思っています。ところで建設省が今、最も力を入れている点は何でしょうか?

チョー・ルイン 最優先事項は、国に必要なインフラの整備です。都市開発や道路の建設、改修などです。

永杉 インフラ整備には巨額の資金が必要になります。ミャンマーでは全土の交通網整備だけで48兆Ks が必要になるとの試算もあります。この資金はどのように調達するのですか。

チョー・ルイン 国の発展に必要な要素は、資金、人材、技術です。この中の資金面では、日本の国際協力機構(JICA)から支援を受けていることはご存知の通りです。そのほか、アジア開発銀行(ADB)、韓国国際協力団(KOICA)、世界銀行からの支援もいただいています。また、技術がないと国は発展できません。そこで現在、技術者を日本や周辺国へ送り、技術を学ばせるプロジェクトを進めています。
最大規模の都市開発 官民一体で推進

永杉 ヤンゴン北西部のダゴンセイッカンで、最大規模の集合住宅を分譲すると地元紙で話題になっています。

チョー・ルイン はい。このプロジェクトは、当初60平方メートルの住宅を1万~ 1万2000戸ほど販売することを考えていましたが、計画を見直し、60~ 120平方メートルの住戸を9000戸販売します。一般向けのタイプは60平方メートルですが、120平方メートルの住戸は高級コンドミニアムとして考えています。18階建てのビルを49棟建てる計画です。 住宅街になりますので、民間企業と連携してバスターミナルやスポーツ施設、病院やショッピングセンターも整備します。はじめは国の予算で進めていましたが、現在は民間からも資金を導入しています。開発企業は、ミャンマー企業もしくは、ミャンマー企業と外国企業の合弁の2つのパターンになります。このプロジェクトは、ミャンマーとして最大規模の都市開発と言えます。

日本企業とJV でインフラ整備
ミャンマー建設省は2013年11月、日本のJFE エンジニアリングと組んで、インフラ建設を行う合弁会社「J&M スチールソリューションズ」を設立している。道路や鉄道の橋梁などの鋼構造物を生産するほか、インフラ設備の設計や計画なども行う。東部カヤー州のタンリン橋や北部ザガイン州のティージャイン橋などを手掛けている。また、ラオスなど近隣諸国向けの橋梁も生産している。受注が好調

工場設備の拡大に着手した。

永杉 オフィスの賃料が高いことが、進出企業の重荷になっています。以前の日本も同様でしたが、どのようにお考えでしょうか。

チョー・ルイン 現在、ミャンマーでは政府が所有する土地は少なくなっており、民間の開発業者が価格を決定し、その結果、不動産価格や賃料が上昇しました。ですので、政府が価格を調整することは難しいのです。また、一部に投機的な動きがあることも、賃料高騰の原因になっている可能性があります。
コンド法で投資呼び込む 年度内法案成立目指す

永杉 2~3年前からコンドミニアム法の議論がありますが、現状はどうでしょうか。

チョー・ルイン コンドミニアム法の成立に時間がかかっているのは、国会で議論を尽くし修正などが行われたからです。
法案では、外国人が一定の階数以上の規格のコンドミニアムを購入することができる条項を入れています。外国の投資を呼び込むため、コンドミニアムを外国人が購入することができるようにしています。私の考えとしては、法案の成立は今年度中を目指しており、選挙後に国会を通過させたいと思います。

日本の技術に大きな期待 インフラ整備は資金、人材、技術

永杉 建設省は、日本のJFE エンジニアリングとジョイントベンチャーを組んでいますね。

チョー・ルイン 以前は鋼構造物を海外から入札で輸入していたのですが、納期が遅れたり、こちらの注文通りでなかったりして困りました。そこで、国内で必要な資材を確実に調達できるようにしたのです。合弁で「J&M スチールソリューションズ」を立ち上げました。同社では200人の雇用を生み出しています。また、ザガイン州で長さが7700フィートもある橋梁を作っているのですが、J&M の仕事は予想以上に速く、予定よりも早く竣工しました。
災害時の情報収集を改善 情報公開で民間支援を後押し

永杉 ところで、防災面での取り組みはどのようにお考えですか。

チョー・ルイン 日本では頻繁に地震がありますが、ミャンマーはそれほどの頻度では発生しません。しかし、 地震が多い地域もありますので、十分考慮しなければなりません。平屋建ての住宅では耐震基準を定める必要はないと思いますが、高層ビルには検討が必要です。現在の法律では定められていませんが、適宜指導をしています。先ほど申し上げたダゴンセイッカンのプロジェクトでも、十分な耐震性を確保しています。
私は今回の洪水災害の復興支援の責任者も務めているのですが、連邦政府だけでなく、その下部組織である管区政府や市政府などからも情報があがってくる仕組みを作りました。その情報をオープンにしたことにより、非政府組織(NGO)などはかなり活動しやすくなったと思います。国連機関のほか、JICA やADB なども支援をしてくれています。ただ、今後は被災者が元の生活に戻るための支援も必要になります。災害以前よりも良い街をつくらなくてはなりません。現在、委員会で復興のマスタープランをまとめているところです。

永杉 本日は長時間にわたり、とても詳しいお話を賜りありがとうございました。今後ますますのご活躍をお祈りしています。

MYANMAR JAPON CO., LTD. 代表
MYANMAR JAPON および英字情報誌MYANMAR JAPON+plus 発行人。日緬ビジネスに精通する経済ジャーナリストとして、ミャンマー政府の主要閣僚や来緬された安倍昭恵夫人、笹川陽平氏などとも誌面で対談している。独自取材による多彩な情報を多視点で俯瞰、ミャンマーの事業支援や投資アドバイスも務める。ヤンゴン和僑会代表、一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員。