【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2015年2月号>ヤンゴン外国語大学学長 Dr. Lwin Lwin Soe 氏

今回のテーマ:たしかな語学人材をいかに育て、高めていくか

ヤンゴン外国語大学学長・UNESCO ミャンマー国内委員会事務局長
ヤンゴン大学の前身であるラングーン大学を経て、1992年11月、同大学の助手として英語学部に赴任、1994年にヤンゴン大学で英語課程で博士号を取得。その後、ダーウェイ大学での勤務を経て、96年よりヤンゴン大学に移籍、助教授、教授へと昇進する。2007年から11年までヤンゴン教育学院の学長代理、11年にヤンゴン外国語大学の学長代理に就任。同年4月、UNESCO のミャンマー国内委員会の事務局長に就任。12年にヤンゴン外国語大学の学長に就任し、現在に至る。

日本語が英語に次ぐ人気に

永杉 今号では、語学人材養成の最高学府であるヤンゴン外国語大学(YUFL)について紹介させていただきたいと思っています。
まずお伺いしたいのは、日本語学部についてです。YUFL で日本語専攻の学生はどのくらいいるのでしょうか。

ルイン 毎年度の新入生は100人くらいですが、一部の学生は在学中に日本に留学していきます。したがいまして、全学年を通じますと大学に留まる学生の総数は300名くらいです。 ただ、朝7 時から8 時半まで実施している早朝クラスに約200名、夕刻に設けている人材開発プログラムに約300名が参加しておりますので、トータルでは800名以上もの学生がYUFL で日本語を学んでいることになります。

永杉 日本語を学んでいる学生は二番目に多いのですね。

ルイン はい。中国語の学習者も多いのですが、いまでは日本語が英語に次いで専攻者の多い言語となっています。ちなみに、中国語の専攻者は600名となります。

永杉 すべての言語の専攻者をあわせると何人になりますでしょうか。

ルイン 通常の昼間の学部ですと3308人の学生がいます。そして2000人を超える学生が朝と晩のコースで学んでいます。よって5300人を超える学生数を擁している計算になります。

永杉 じつに多くの学生さんがYUFLで学んでいるのですね。ちなみにミャンマー語を学ぶためにYUFL に在籍している日本人や外国人学生もいるのでしょうか。

ルイン ええ、おります。ミャンマー語センターが設置されており、外国人留学生に対して語学教育を行っています。今期は合計252名が在籍しており、そのうち78人の学生が次年度も学習を継続することになっています。

ビジネスでの実践を想定した教育も

永杉 ところで、日本語が人気の専攻科目になっているとのことですが、その理由はなんでしょうか。

ルイン ミャンマーの若者は日本語で仕事をすることに興味を持っており、通常クラスとは別に、臨時コースや夜間クラスに参加する学生も増えています。今日、多くの日本企業がミャンマーに現地法人を開設していることから、YUFL の日本語学部には多くの求人が来ており、就職率は100%に達しています。このことは、当学にとって大変誇らしいことです。

永杉 日本語を専攻するだけで就職ができるのは学生にとっては魅力的なことでしょうが、人材ビジネスに携わる立場から観察しますと、雇用側が求める技能を備えた日本語人材の供給が十分ではないようです。この需給ギャップをいかに埋めてくのか、YUFL ではどのように考えられていますか?

ルイン 通常クラスと専門クラスでは、日本の文化や、歴史、伝統、文芸・文化を含んだ科目があります。ビジネスマナー、ビジネス用語、職場のルールなどを教えたり、トレーニングの機会を提供することを計画しています。また、大学や企業とも協力していきます。創価大学、城西大学、国際福祉大学といった大学や、イオン1%クラブといった基金との間に当学は奨学金供与に関するMOU を結んでいますが、今年3月には沖縄の名桜大学との提携も予定しています。

学生たちには、優れた教育システムと環境で学業に携わってもらいたい

永杉 それは喜ばしいことですね。できれば、会社に入るまでに必要な基本スキルを学生時代に身につけられるのが望ましいと思います。私は21 歳の学生時分から日本、アメリカ、中国でビジネスに携わってきましたので、よろしければ自身が蓄積してきた知識と経験を提供させてください。

ルイン 有り難いお申し出をいただき光栄です。ビジネス知識を教える講義やトレーニングの提供は今年、2015年から開始する予定です。永杉さんのようなビジネスの最前線で活躍されてきた方にご指導頂けましたらとてもありがたいです。

提携大学・機関との活発な交流

永杉 ところで、数多くの学生さんがYUFL に入学してくるなかで、管理上さまざまな矛盾や問題も生じているのではないでしょうか。一番、タフな問題はなんでしょうか。

ルイン やはり教育者の確保でしょうか。いま、日本のNPO からネイティブ・スピーカーの講師を探すために支援をいただいています。
もともと、日本語学部の開設にはネイティブ・スピーカーの講師数名と学部長になるドー・スー・スー・シェインという者が当たりましたが、いまではネイティブ1名を含む26名の講師が在籍する規模になりました。そして、さらに増員する必要に直面しているのが現状です。日本語学部の卒業生に対して教育訓練を行うほか、外国の大学の博士号をもつ教師たちの招聘に取り組んでいます。彼らに当学の日本語学部に赴任してもらい、博士課程のカリキュラムを提供していただく予定です。

永杉 学生が勉学を続けていくうえでは、ハード、ソフト両面にわたるさまざまな環境整備が必要となります。物品面の確保も看過できない課題となっているのではないでしょうか。

ルイン 実は言語研究室が1974年にソニーから寄贈されましたが、ナルギス台風によって損壊しました。その後、別の研究室が贈られ、2012年にレベルアップしたものに生まれ変わったものの、良い状態にある研究室は6つあるうち2つのみです。これらが国際水準の品質に引き上げられるとともに、学生たちに相応の教育援助が行われ、学習施設の確保ができるようになることを望んでいます。
一昨年11月に日本を訪れ、大学を視察する機会がありましたが、日本の学生が近代的な教育システムを享受し、新しい教育施設を利用していることを知りました。私たちがそこから学べることは少なくないと思いました。

たしかな教育環境の確保のために

永杉 日本の企業が貴学にバックアップできることはありませんか?

ルイン 最近のことですが、前述したイオン1%クラブ基金による一年目の奨学金として20人の学生が1人につき奨学金200 ドルを得ました。成績に秀でた学生は次の年度には300 ドルが得られる予定で、奨学金の総額は4000 ドルから9000 ドル、そして15000 ドルへと増えていきます。また、今年2月には学研より書籍が寄贈される予定です。こうした奨学金プログラムの存在や寄贈なども日本語を専攻する学生数の増加につながっているのだと思われます。
今後も他の大学や企業と協力し、先進的でたしかなシステムのもとで学生が学業に専念できる環境の確保とその進化に努めていくつもりです。

永杉 「MYANMAR JAPON」を通して貴学の状況を知った日系企業や機関が、今後、新たな援助をしようとオファーしてくることがあるかも知れません。ヤンゴン外国語大学と、その素晴らしい学び舎で教鞭を振るわれる先生の方々、勉学を続ける学生のみなさんのますますのご発展をお祈りしています。

ミャンマー語学教育の双璧をなす

ヤンゴン外国語大学(Yangon Universityof Foreign Languages) の前身は外国語学院(Institute of Foreign Languages:IFL)と呼ばれ、1964年に開設。その後、1996年に大学に昇格し、現名称に改められた。ミャンマーにおける語学教育は、ヤンゴン外国語大学と上ビルマのマンダレー外国語
大学(Mandalay University of Foreign Languages:MUFL)が双璧をなしている。
専攻言語には、中国語、日本語、韓国語、タイ語、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語などがある。なお、英語に次ぐ人気の学習言語の座を日本語が中国語から奪うなど、外国の語学教育の現場では珍しい現象が見られている。

MYANMAR JAPON CO., LTD. 代表
MYANMAR JAPON および英字情報誌MYANMAR JAPON+ plus 発行人。ミャンマービジネスジャーナリストとして、ビジネス・経済分野から文化、芸術まで政府閣僚や官公庁公表資料、独自取材による多彩な情報を多視点で俯瞰、マーケティング・リサーチやビジネスマッチング、ミャンマー法人設立など幅広くミャンマービジネスの進出支援、投資アドバイスを務める。ヤンゴン和僑会代表、一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員。