【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2018年5月号>ミャンマー食品加工業・輸出協会会長 エイ・ウィン氏

今回のテーマ ミャンマー食品業界の発展を担う

エイ・ウィン氏 [U Aye Win]

Myanmar Food Processors and Exporters Association
会長

1992年、Yangon Institute Economicsで経済学の学士を取得。茶葉の生産販売を行うThuriya Win社代表取締役のほか、食用油や石油関連製品を扱うMEICO社マネージングダイレクターなど、多くの企業経営に携わる。ミャンマー食品加工業・輸出協会会長、UMFCCIの共同事務局長など、要職の兼任も多い。

ミャンマーの食品輸出は食材が中心
今後は付加価値の高い商品を作りたい

食品企業が約800社加入
生産量向上、輸出拡大を目指す

永杉 本日はミャンマー食品加工業・輸出協会(Myanmar Food Processors and Exporters Association)会長のエイ・ウィンさんにお話を伺います。早速ですが、協会の成り立ちについてご説明ください。

エイ ミャンマー国内にある食品関連企業800社以上が加入しています。CocaCola、Yum Yum、Super Coffeemix、Premiere Coffee、Alpine、Good Morning、Grand Royal などの有名ブランドも含まれますが、全体の9割は中小企業です。それぞれが取り扱う製品は、食用油、ソフトドリンク、スナック類、コーヒー、茶葉、インスタントラーメンなど多岐にわたります。

永杉 会長に就任された経緯と、ご自身の役割についてお聞かせください。

エイ 私はメインビジネスとして茶葉の生産から販売まで一貫して行うThuriya Win社を経営し、Nagar Pyanというブランドを販売しています。食品加工業・輸出協会へは会社として加入しました。その後、執行役員、中央執行委員、共同幹事、事務総長を経て、2017年の選挙で会長に選出されました。
協会ではさまざまな取り組みを行っておりますが、主な目的としては、生産量の向上、付加価値の高い製品の生産促進、輸出拡大などが挙げられます。私は会長として方針や計画を立てる際に会員をリードする役割です。組織内の取りまとめだけでなく、関係省庁・非政府組織などへの働きかけも重要です。また、会員拡大をはじめとした組織の活性化にも取り組んでいかなければなりません。

永杉 現在、ミャンマーが輸出している主な食品はどのようなものですか。

エイ 米や豆などのほか、ゴマ油、蜂蜜、マンゴージャム、冷凍野菜、コーヒー、紅茶などです。伝統食品も輸出はされていますが、海外在住のミャンマー人向けで数は多くありません。輸出の大半は一次産品の食材で、パッケージされた食品の輸出割合は微々たるものというのが現状です。

海外企業との競争は厳しい
官民挙げての対策が必須

永杉 協会が抱える問題、ひいてはミャンマーの食品業界が抱える問題点として、どのようなものが挙げられますでしょうか。

エイ 大きな問題として「原料供給の不安定さ」「資金調達」「小さな市場」という3つが挙げられます。このうち、原料供給問題と資金調達は密接な関係があるのです。銀行から融資審査を受ける際、原材料が質・量ともに安定供給されていないことが足かせとなってしまい、満足な運営資金が得られないという負のスパイラルに陥っている企業を多く見受けます。
小さな市場については、食品業界が抱える最大の問題と言えるかもしれません。現在、ミャンマーの食品企業は東南アジア市場で勝負することはできません。国内市場が主戦場となりますが、海外から多くの加工食品が正規・非正規ともに大量に流入しているため、非常に厳しい競争を強いられています。
当協会は、関連省庁、非政府組織、産業協会などステークホルダーが参加するフォーラムを開催して「全国食品産業発展戦略」をまとめ、食品業界が抱える問題点を解決する施策を国に働きかけています。

永杉 人材の状況についてはいかがでしょうか。ミャンマー人は真面目で優秀な人が多いと思いますが、急激な経済発展や外資流入により、中間管理職やスペシャリストが不足しています。また、ジョブホッピングを繰り返す人材が多いことに各企業が問題意識を抱えているようです。

エイ 発展途上国が慢性的に抱えるのが人材問題です。ミャンマー国内では求人数・給与額の増加に伴い、ジョブホッピングが多くなっています。ミャンマー人には真面目で優秀な人が多いとおっしゃっていただきましたが、残念ながらまだまだ少ないと認識しています。これもジョブホッピングの原因と言えるでしょう。
人材の流動化を防ぐためには、行政も企業も対策を立てなければいけません。まずは、各分野の熟練労働者が増えるよう、職業訓練校や専門学校を充実させる必要があります。企業は労働者にチャンスを多く与えるほか、研修を行うなどして、能力を伸ばす取り組みを進めるべきです。また、労働者が企業に親しみを持てるような仕組みづくりをしなければいけません。外資系企業には、これに加えて我々の文化や伝統についての理解や尊重をお願いしたいと考えています。

国の発展のカギは製造業
日系企業のさらなる進出を期待

永杉 日本についてお聞きします。これまでどのような日系団体や企業とお付き合いをされてきましたか。

エイ 食品加工業・輸出協会としては、JICA、JETRO、ASEAN-JAPAN CENTREなどと関わりを持っています。私個人のビジネスとしては、多くの日系中小企業とお付き合いをしているほか、伊藤園やカーギルジャパンなどとも協力して、ミャンマー食品の品質を向上させ、日本への輸出を目指す取り組みを行っています。

永杉 日系企業とのビジネスの印象はいかがですか。また、どのような日系企業にミャンマーへの投資をしてほしいとお考えでしょうか。

エイ 正確かつ真面目な働き方が最大の特徴だと思います。慎重なためビジネスをスタートさせるのに時間がかかる側面はありますが、それは広い視点で長期的成功をシミュレートしているのだと理解できますので、とても良いことだと考えています。
業種で言うと、ぜひ製造業にミャンマーへ積極的な投資をしてもらいたいです。我が国の発展にとって製造業の成長は欠かせません。政府からの支援も積極的な分野ですので、外資の進出が増加していますが、さらなる投資をお願いしたいですね。

永杉 最後に両国の関係についてお聞きします。歴史的に極めて深いつながりをもっていますが、今後どのような関係になっていくとお考えでしょうか。

エイ 日本はミャンマーの成長に関して、非常に重要な役割を担っていると思います。農村の発展計画や、都市再開発計画など、全土におけるさまざまなプロジェクトに日本が関わっています。第二次世界大戦時の混乱はありましたが、現在それを気にしているミャンマー人はいません。多くの人が日本人を友人であり、良きビジネスパートナーとして認識しています。両国の政府、企業、国民すべてが良好な関係ですので、将来的にもっと関係は深くなっていくのではないでしょうか。

永杉 おっしゃる通り、両国の関係はさらに深化していくと私も考えています。近い将来、ミャンマーの食材や加工食品が日本の食卓に当たり前に並ぶようになれば素晴らしいことですね。本日はご多忙の中、ありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON BUSINESS」、「MJビジネスバンコク版」、ヤンゴン生活情報誌「ミャンジャポ!」など4誌の発行人。英語・緬語ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON+plus」はミャンマー国際航空など3社の機内誌としても有名。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」ではTV番組を持つ。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。 一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、WAOJE(旧和僑会)ヤンゴン代表。