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【緊急特集】祝・経済制裁 解除!! 第2次ミャンマー開国

9月のアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相の訪米を受け、オバマ米大統領より「早晩、制裁解除の準備がある」と一気に動き出したアメリカの経済制裁解除の動き。そして、10月7日(ミャンマー時間8日早朝)、アメリカ財務省より経済制裁が全面的に解除された。ミャンマージャポンでは、関係者並びに日系企業に対し緊急取材を実施、その行方と日系企業に与える影響について検証した。

SDN リストとは

SDN(Specially Designated Nationals andblocked Persons)リストは米国、外国資産管理法(Foreign Assets Control Regulations)に基づき作成公表される国家の安全保障を脅かすと指定された国、法人、個人のリスト。対象者は米国内に保有する資産凍結だけでなく、米国内で営業する外国法人、子会社、支店もその資産凍結義務が課され、義務を怠った場合厳しい罰則、罰金が科せられる。米ドル建て送金も対象で、送金依頼人・送金受取人だけでなく、すべての取扱銀行(送金銀行、受取銀行、経由銀行、決済銀行)もその義務を負い、米国に直接送金だけでなく、米国以外の国への送金も対象。

新たなビジネス競争のスタート、日本も官民を挙げて対応していく

在ミャンマー日本国大使館
公使参事官 丸山 市郎氏

ミャンマーのアメリカからの経済制裁は1997年から始まりました。当時は軍事政権に対する制裁として米国籍企業の新規投資を禁止するといったものでした。その後、2003年、マンダレーでのアウン・サン・スー・チー氏の襲撃・拘束を受け金融制裁が課され、SDNリストの強化が行われました。2008年にJADE法が施行され、翡翠やルビーのアメリカへの輸入を禁止、国軍幹部に対する査証の発給阻止が行われました。2011年、テイン・セイン政権が発足、クリントン国務長官(当時)が来緬し、一部で制裁解除が期待されましたが、本年のNLD政権登場によってその機運が高まり、9月のアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相としてのアメリカ公式訪問を受けて、全面解除になりました。私としては、アメリカ政府が発表していた「全てのSDNリストを解除する。ただし、麻薬、北朝鮮関連以外」ということに対し、アジアワールドや国軍の企業についてどのような扱いになるのかが関心の一つでしたが10月8日にそれらも含めほぼ大半がリストから外れたのを見て、これがアメリカの答えなんだと思いました。
SDNリストに掲載されていた企業の多くはミャンマーが軍事政権下で様々な制約がある中でビジネスを拡大してきた者が大半ですが、今回の解除によってまさに通常のビジネスが出来ることになります。日系企業にとっても、本来、彼らがビジネスパートナーになるべき企業であるにもかかわらず、SDNリストに掲載されているためにそれが出来ない状態が続きました。そのため、一部日系企業が実績のない企業と組み、だまされるケースがあったのも事実です。実は、勘違いされていることも多いのですが、SDNリストに載っているからといって合弁したり、ビジネスしたりできないわけではないのです。ただ、ドル送金が出来なくなること、及び米国内のレピュテーションリスクの問題がありました。今回の制裁解除によって、それらのリスクがなくなり、選択肢が広がったことは、日系企業にもミャンマー経済の発展にも大きくプラスに働くと思います。
ただ、アメリカ企業が参入してくるということは、日本としてはそんなに楽観視できないことです。日本は官民共にプロジェクトベースでビジネスを進める傾向にありますが、アメリカは制度、ルール作りをしながらビジネスを展開していきます。法整備等アメリカ主導で進める可能性が十分にあります。金融制裁解除によって、アメリカの金融、保険、流通、IT等、物流インフラを直接必要としない業種がまずやってくる可能性が高く、競争相手が大幅に増加します。事実、先日、マイクロソフトが駐在員事務所を作り、すでにその素地を作り始めました。こうなると日本はミャンマーの経済発展と共に日系企業のビジネス展開のために何をしていくべきか、官民を挙げた取り組みを進めていくことが重要です。競争の激化が見込まれる中、今までと違うステージで戦っていくことになるので、心して取り組まなければなりません。

日米の協力と分担でミャンマーのビジネス環境整備を!

日本貿易振興機構(JETRO)
ヤンゴン事務所長 山岡 寛和氏

ミャンマーの経済制裁全面解除は非常に歓迎されると思います。大きく以下の3つの点が変わるメリットが大きいです。
第1にビジネスの裾野が広がること。現在ミャンマーは事業分野や土地利用等の規制により、外資が単独で自由にビジネスできる環境になく、パートナーを選ばないとビジネスが始まりません。SDNリストに載っていることで提携の検討をできなかった企業がビジネスのポテンシャル・パートナーとなる意義は大きいと考えます。進出を検討できるビジネス領域もこれまで以上に広がる可能性があります。
第2は、ビジネスのスピードの変化です。今までは、SDNリスト外の一部企業に提携先が集中し、ミャンマー側パートナーのキャパシティー・オーバーでビジネスのスピードが損なわれる弊害も起こっていました。経済制裁の全面解除は、ビジネスのスピードアップに好影響を及ぼすことを期待したいと思います。
第3に、アメリカがミャンマーにビジネス環境整備のアプローチに加わるメリットです。アメリカ企業が本格的にミャンマーに進出してくるようになると、ミャンマーのビジネス環境が手強いことが想像を超えることに驚くはずです。アメリカは特にアンフェアを嫌います。法制度の運用、企業情報の開示、汚職の撲滅等、フェアなビジネス環境をミャンマーに根付かせる点で日本とアメリカは協力できます。また、効率的にミャンマーのビジネス環境を変えていく上で、日本とアメリカはそれぞれ得意分野で分担することも検討すべきだと思います。

ビジネスを拡大する大きなチャンスがやってきた!

三菱商事株式会社
ミャンマー総代表 井土 光夫氏

今回の経済制裁全面解除は弊社としてもJCCMとしても大歓迎です。今までSDNリストの対象企業であるというだけで投資できなかった企業に対して、大手を振って投資できる環境になることが何よりも大きい。これによって国営企業との民間投資が増えたり、インフラ関係(シティターミナルや港湾関係等)や軍が持っていた製鉄・肥料・精油等の基幹産業に取り組めるようになり、ビッグビジネスのチャンスが広がります。アメリカ企業の参入により競争が激化することも考えられますが、それ以上にアメリカ市場に輸出していくこと等の拡大が見込めます。また、現在、投資法も見直されており、その細則が発表されれば、これからが本格的な民営化の始まりと考えられます。弊社はすでにミャンマー国内で色々な事業に投資していますが、今後のパートナーの拡大によってビジネスチャンスが広がることを期待しています。

今回、ミャンマージャポンでは経済制裁解除に関して、日系企業への影響を探るべく、緊急アンケートを実施しました。(n=30)

 アンケートの結果から、制裁解除への期待度は「とても」「まあまあ」を合わせて85%と高く、本件に対する関心の高さが伺えます。ただ、自社がどうなるかということに対してはまだまだ半信半疑で、急激に動き出すということはなさそう。影響に関してはおおむね好影響の意見が多くみられます。ただし、人材難や不動産高騰といった、新たな外資の参入による市場環境の変化に対しては懸念を見せているようです。

銀行送金や決済、本当に早くなる!?

ヤンゴンに支店を構える日系金融機関の中でも、経済制裁解除はホットな話題。アンケートにもあるように「銀行送金や決済の事務作業が軽減される」のではとの期待も高く、実際のところどうなのか、突撃取材してみました。
A行の話「経済制裁が解除されれば、当然、決済回りが楽に早くなります。現在、ミャンマー関係の送金には銀行の本部承認が必要なものもあり、1件毎に確認作業があります。時には送金後に米国銀行で止まることもあり、そうなると期限内に質問に回答するなど大きな負担が発生します。それらが大幅に削減されるのは、お客様にとってもスピードアップ、ストレス緩和が図れ、非常に好ましいことです」
また、B行によると「一部、麻薬関係、北朝鮮関係がリストに残るので完全に作業がなくなるわけではないですが、大きく変わると思います。ただ、それに伴い、弊行もリスク管理・リスクコントロールの立場からミャンマー企業の実態を知る必要が発生してきます。今までのSDNリストの対象かどうかという確認だけでなく、その企業が本当に健全で安全な企業であるか見極める必要があります。そのための財務諸表や企業の透明化を迫っていく等アセアンの中で戦える企業にしていくことが、他国を知る外銀の使命だと考えます」
両行とも若干の違いはあるが、今回の解除に関して、送金や決済が早く、簡単になることは間違いなさそうだ。あとはいつからそれが可能になるかだろう。

自国の立ち位置、特徴を見直す時期になった

株式会社大和総研
主席研究員 ヤンゴン駐在 佐藤 清一郎氏

経済制裁がなくなることによってミャンマーは投資対象国として見られるようになります。それにより、世界中からヒト・モノ・カネがやってきます。物の流れが活発になり、消費財等様々な物資が入ってくるので、貿易赤字が拡大するでしょう。為替価値が大幅に低下する可能性が高くなります。現在のミャンマーは様々な面でビジネスのエネルギーがまだまだ弱い。周辺各国と比べてもGDPの規模に対して企業の債務残高が低く、金融がうまく利用できていません。つまりお金を借りてまでビジネスをしていないということです。これらも踏まえて、国際社会の中でどのような位置づけに自国を持っていくか、自国の方向性や特徴を見直す時期になったのではないでしょうか。例えば農業特化をするとしても、どのように特化していくのか、周辺国と比べてより具体的に。今回の件はミャンマーにとってチャンスでもあり、ピンチでもあります。ここがミャンマーの踏ん張りどころだと思うので、今まで以上に注目していきたいと思います。

ミャンマーをよくしていくため、今まで以上に力を合わせていく

MAX MYANMAR / AYA FINANCIAL GROUP
Chairman ZAW ZAW氏

経済制裁が一斉に解除され、全員一緒にリストから外れたことは何よりも嬉しいことです。これからがミャンマー経済の始まりだと感じています。私自身はとにかく真面目に仕事をしてミャンマーのためになることをしていきたいと考えおり、そのチャンスがやってきたのです。アウン・サン・スー・チーさんがアメリカに行って今回の解除となりましたが、彼女が考えている国のため、国民のQOLを少しでも高める等、私も心から賛同し、一緒に国のため尽くしていきたいと考えています。
今後、ミャンマーが投資対象国になるということは、一方で私たち自身もレベルアップが必要で、外国から投資をうけるということはデューデリも同時に必要なので、対応できる会社づくりが必須となります。自社だけではなく、国全体のために他社にも広めていきたいです。私は日本にいた頃、日本の会社員の真面目さや質の高さに驚き、尊敬し、自分もそうありたいと考え、そういう姿勢でこれからの国のため、日本にもいろいろと教えてもらいながら、あきらめずにこの国の仲間たちと一緒に頑張っていきたいと思います。