ドル枯渇、チャット下落危機、日系企業が果たす責務とは混迷する状況下の経済活動(P.2)

ヤンゴン帰還希望者が多数
現状のペースなら2年先も

─銀行は通常営業していましたか
 ある銀行の本店に行きましたが、通常通り営業していました。スタッフは私服で業務しているものの、CDMという感じはあまり見受けられなかったです。

─経済成長の見通しについては
 世界銀行はクーデター前がプラス2%でしたが、現在はマイナス10%になると発表しました。アジア開発銀行もマイナス9.8%になると予測しています。ただ、農業がプラス1.9%の成長であり、内需と輸出が下支えするため、農業は大きな影響にはならないということです。製造業はマイナス10.8%となるので景気減速が進み、すでに縫製業では2月1日以降20万人以上が失業したと言われています。さらに国際食糧計画(WFP)はこの先半年で最大340万人が飢餓に陥る恐れがあると明らかにしています。

─最近の日系企業の動きについては
 4月以降、治安が落ち着いてきたことで一時退避していた駐在員の呼び戻しが課題となっています。というのは、コロナ禍同様、救援便の日本人枠が限られ、ミャンマーに戻りたくても戻れないわけです。

─多数の希望者がいるということでしょうか
 6月以降の救援便搭乗希望者のアンケートをミャンマー日本商工会議所(JCCM)で調査したところ、755人がヤンゴンに戻ることを希望しています。それに加え、非JCCM企業やODA関係者なども加えると増えるのは確実です。6月3日の救援便には約30名が乗れることになりましたが、これまでJCCM枠は15名程度でした。仮に15名のペースだとすると、希望者全員がヤンゴンに戻るには約2年かかるということ。よって、ヤンゴンに帰ってきたくても帰ってこれないという問題が浮上してくると予測されます。現在、大使館やJCCMの関係者らでどう対応すべきか慎重に検討を重ねています。

▲ダウンタウンはコロナ以前のように経済が回っているが、コロナとクーデターの影響で閉店した店も多い
▲ヤンゴンを代表するショッピングモールのミャンマープラザは多くのテナントがオープンし、客も増えてきた

─現状の金融不安だと、ヤンゴンに戻ってきても事業は難しいかもしれません
 銀行の預金を動かせないとなると、我々も手元に現金がなくなり生活ができなくなるため、帰らざるをえない状況になる可能性はあります。弊職はなるべく長くミャンマーにいたいので、手元の現金はあまり使わず金融システムの早期回復を望んでいます。

─他に課題はありますか
 日本本社と現地の情報認識に隔たりがあります。現状ヤンゴンの治安は落ち着いていますが、日本側の認識は「今も治安は悪い」「経済活動は完全に停滞している」といった話も聞きます。また、新型コロナの第三波への警戒も必要になると思います。現在、周辺国で感染拡大が続くなか、ミャンマーでは1日に10~20人の新規感染者が確認されています。昨年ミャンマーの感染拡大は8月下旬以降だったので、遅れて来る可能性もあるでしょう。感染予防のための注意は引き続き払っておいた方がよいと考えます。

─進出の問い合わせは
 やはりそれはないですね。現状は治安状況、操業状況などの確認がメインで、必要な方にはオンラインで説明をしています。こうした動きはコロナ禍のパンデミックから続いていますし、日系企業のご相談には真摯に対応していきたいと考えています。