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帰国か、残るか ミャンマー在住者に課される選択

クーデターから3ヵ月が経過し、先の見えない状況が続くミャンマー。各日系企業も日々難しい舵取りを任されるなかで、増えてきたのが日本への退避者。日系企業の現状はどうなっているのか?
帰国者が語る日本から見たミャンマーなどリアルな声をお届けする。

帰国の理由となる安全面と業務の不可
 帰国か、残るかー。現在、多くのミャンマー在留邦人に突きつけられている課題であることは間違いない。ミャンマーに残っている日本人は5月初旬で7~800人とも言われ、日を追うごとにその数は増えている。帰国方法はこれまでANAによる直行便を利用する人が多かったが、4月末の段階ではシンガポール経由や韓国経由を利用する人も増えてきた。

 帰国を決める背景には日本の外務省が発表している通り、「必要かつ急を要する用務などがない場合には、帰国の是非を検討されるようお願いします」という通達や、日本で連日続く過激な報道を受け、本社が決定することもある。従業員の安全を守ることが企業の責務であることは間違いなく、図らずもコロナ禍を経たことでリモートワークのオペレーションを計算できるようになったのも大きいだろう。

 何より帰国の理由は「安全面への懸念」「現状業務が不可能」という2つが大きい。ただ、安全面については日本の報道とは多少異なり、注意して行動すれば大きな問題はないという感覚はある。もちろん突発的な検問や予期せぬハプニングはあるが、危険と言われるエリアに近寄らない、また外国人が理由なく暴行されたといった報告もほとんどないことからパスポートを携行するだけでもリスク回避になる。こうした最低限の注意だけでも気にしていれば、日常生活はおくれるという事実もある。

 そして、もう一つの要因は市民的不服従運動(CDM)の影響で、ビジネスの根幹でもあるヒト・カネ・モノが動いていないことによる経済活動の停止。こちらは絶望的で、例えば建設現場はほとんどが動いておらず、その上正常化の見通しが立たないというのであれば日本人が常駐する理由はない。

▲ヤンゴン発展の象徴ともいえるミャンマープラザはATM待ちの行列で人が溢れていた。ショップングモール内もコロナ以前の7割といった客入り

停滞必至の経済状況でポジティブな帰国も
 こうして日本人の帰国を決める企業は増えているものの、どんなビジネスマンに聞いても「あくまでも一時帰国。絶対に戻ってきたい」という熱い思いを持った人が多い。もちろんやむなく撤退した人もいるが、皆一様に悔しい思いを口にしている。

 また決して帰国そのものがネガティブではなく、日本の仕事を増やすことで、ミャンマー人スタッフの雇用を継続させるというポジティブなケースもある。ある帰国者は、ミャンマー経済が停滞することで、それを機会に日本で知見を貯め、戦略の立て直しを図るといった前向きな理由を語っていた。

▲ODA 案件で建てられた新タケタ橋。タケタ地区も一時の混乱はなく、平時に戻っていた。タンリンまで行ったが途中に検問などもなかった

 ミャンマーの方々の日系企業に対する期待は小さくはない。だからこそ高い視座からミャンマーの未来、経済、人々を見つめる必要があり、国が正常化した際にはすぐに事業が再開できるなどの準備をしておくことも重要だろう。今後ミャンマー経済が停滞することは避けられず、すでに路上にはホームレスも増え、仕事はおろか食に困る人も増えてきた。すでに食料支援を行う日系企業や日系団体も出てきており、そうした分野での貢献も近い将来求められるかもしれない。

 長年に渡り日系企業はこの国に寄り添う形で尽力してきた。そうした積み重ねがあるからこそ現在の信頼にもつながっており、今後もそうした思いが失われることは誰も求めてはいない。仮に日本に帰国をしても、この地に残っても、やれることはあるはずだ。

▲ODA 案件であるバゴー橋は現在工事をストップし、雨対策のための養生がされていた。先が見えない建設現場は日本人の帰国者が相次いでいる