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日系事業、催涙弾を撃たれた日本人ほか日系社会の現状に迫る 日系社会の現在

未だ混迷を続けるミャンマー情勢。市民不服従運動(CDM)で経済はまったく動かず、軍事政権は市民への弾圧を強化。軍事政権に対抗すべく、NLD当選議員による連邦議会代表者委員会(CRPH)が立ち上がり、今やミャンマーはまったく先が見えない状況にある。そのようななか、日本人社会では一体どういう動きが生まれているのか?

 これを書いている3月22日の時点で4月のミャンマーの現状がどうなっているかは明言できない。というのは、3月27日が「国軍記念日」にあたり、その前後で大きな動きがあるかもしれないからだ。ここに掲載しているのは、3月22日までの現状ということを最初にお伝えしておきたい。
 日系企業としての動きは、日本に帰国する駐在員が増えているということ。3月19日の成田便には150名が日本に帰国し、現在ミャンマーにいる日本人は1200人前後だとみられている。
 帰国者が増えた背景にあるのは、治安の悪化はもちろんだが、CDM 運動にともなう経済活動の停止、さらに先の見えない現状というのが大きい。コロナ禍でもミャンマーで耐え忍んできたビジネスマンですら今回帰国を決断したケースも多く、ひとえに事業ができなくなったことが背景にある。
 下記の通り、建設現場、物流現場でも厳しい状況を余儀なくされ、それだけではなく、金融、各種サービスといった事業も機能していない。いわば何もできない状況で日本人スタッフを駐在させるのは合理的ではなく、治安も不安という観点からも帰国という流れはある意味当然のこと。今後の情勢にもよるが、さらに治安が悪化すれば、日本人の帰国にも拍車がかかるだろう。
 ミャンマーの日系企業の主要産業でもある建設事業、そしてミャンマー在住者の生活にも関わってくる物流事業ほか催涙弾を撃ち込まれた日本人など、ヤンゴンの現状をお届けする。

建 設

ODAを含めた注目事業が多い建設現場。
さまざまな課題が浮かび上がってきている

 ヤンゴン市内の日系のみならずほとんどの建設現場は、ほぼ中断している状態であり、その背景には日々の情勢が悪化していること、いたるところでデモ活動が行われ、夜間には軍隊・警察による逮捕・拘束があり、CDMでワーカーが集まらず、バックオフィスのスタッフも地方に帰省や有給を取るなどし、これまでのように作業ができる状況にないことが挙げられる。ティラワ経済特区(SEZ)内では、可能な範囲で進んでいるものの、ヤンゴン市内に住むスタッフは通勤が厳しく、タンリン地区の在住者だけで稼働しているといった実情。

 ODAの地方の現場では、想定していた労働力が集まらず細々と稼働している。また、ある案件では工事を再開しようとしたところ、デモ隊が現場まで来て抗議活動を行い、SNSで“Social Punishment”として晒されたというケースもあった。こうした実情から、現場を再開したくとも現時点では不可能だと判断している企業がほとんどである。

 一方、動かせない現場でも日々のコストがかかっており、例えば建設機械のレンタル費や警備員といった費用は、時間の経過とともに積み重なるだけで、そうしたコストも施主と事業者の間で調整が必要となる。また、納期も止めていた期間だけ上乗せすれば済むわけではなく、作業前段階の下準備も必要なため、さらにプラス1、2ヵ月かかってしまう。自ずと当初の予算よりも割高になるのは否めない。こうした状況を鑑みると、3ヵ月や6ヵ月の停止を決めた方が施主、事業者双方にとっても痛みは少ない。また、資材については、そもそも現場が動いていないため、まだ枯渇していない現場が多いが、なかなかスムーズにいかない通関の問題もあり、不安は依然として残る。

 治安の問題、CDMによる人材確保の厳しさに加え、銀行業務の停滞や通信制限、外出禁止令といったネガティブ要因もあり、ヒト・モノ・カネのすべての要素が改善されない限り、現場再開は難しい状況となっている。

物 流

ミャンマー生活者にも関わるインフラ。
物流現場は、現在どうなっているのか?

 物流現場も非常に厳しい状況に置かれている。まず税関については、ヤンゴン税関本館、ヤンゴン港税関、ティラワSEZ税関いずれも稼働しているが、船舶代理局(SAD)がCDMの影響を受け、職員が少なくなっているために対応可能な件数が減り、場合によっては断られるケースもあるなど手続きが滞っている。また、コンテナの運搬を担うトレーラーの確保も難しくなっている。CDMへの参加とともにヤンゴン一部地域に敷かれた戒厳令によってトレーラー業者が受けたがらない状況になったためだ。
 そして、物流での最大の問題は関税、商業税などの支払いができないこと。銀行業務がストップしているため、ペイメント・オーダー(PO /支払い指図書)が購入ができないため、手続きが不可能。ティラワSEZのフリーゾーンに入居する企業などはそれらを支払う必要がないため問題はないが、それ以外の貨物は実質ストップした状態。POの問題は海上、陸送、空輸すべてに関わっており、物流の大きなボトルネックとなっている。ただし、陸送においては、タイ~ミャンマー国境近くの銀行は営業しているため、関税などの支払いは可能(ただし、ティラワSEZ向け貨物はティラワ税関にて通関を行う必要がある。また、ヤンゴンでの関税の支払いは、ヤンゴン区域の銀行で発行されたPOしか受け付けない)。
 また、タイの港は世界的なコンテナ不足の影響を受けてはいるものの稼働していることもあり、タイ経由で輸出入を行う陸送ニーズが高まっている。しかし、輸出においては原産地証明の問題で保税・保管ができないなどの理由からタイの海上輸送ブッキング確定後に陸送手配が必要となるため、タイムリーな出荷ができず、日本行きについては船便に比べてコストが数倍かかり、非常に厳しい実情となっている。
 航空便に目を向けると、CDMのために輸出はほぼ止まった状態で、輸入については到着済みの貨物のみ対応できるが、上記の関税などの問題があり、こちらも厳しい。こうした状況を受け、一部物流企業では日本人スタッフを帰国させるなど、先の見えない状況が続いている。