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NLDの圧勝で、スー・チー政権の継続が決定 ミャンマー総選挙を読み解く

終わってみれば国民民主連盟(NLD)の圧勝で幕を閉じたミャンマー総選挙。コロナ禍で一時は選挙の延期も噂されていたが、大きな混乱もなく、平和裡に終えることができ、2020年最注目の一大イベントが終結した。気になるのは、コロナ禍での経済復興と国内和平の実現であり、NLD継続政権となる今後の5年間。ミャンマーを誰よりも知り尽くす丸山大使、選挙のために来緬した日本財団・笹川会長など、識者たちの声を取り上げる。

在ミャンマー日本国大使館
特命全権大使

丸山 市郎[MARUYAMA ICHIRO]
 
日緬の関係を考えるとき、誰よりも話を聞かなければならないのが、丸山大使。ミャンマーは一体どのように変わるのか?次期NLD政権の課題は?
選挙後、スー・チー国家最高顧問とも面会したという丸山大使は、未来の日緬関係をどう捉えているのだろうか。

世界に先駆けて首相が祝意
サポートは日本が旗手を担う

──今回の選挙の結果について、感想を聞かせてください
 前回2015年の総選挙では、与党の国民民主連盟(以下NLD)が390議席を獲得し、今回はそれを上回る396議席となりました。一部メディアでは「国内和平や経済が停滞したため、NLDは議席を取れない」、「少数民族武装勢力の多い地域では議席を落とす」などと報じられていましたが、大使館としての考えは決してそうではありませんでした。50年以上に渡って軍事政権が続き、2015年にNLD政権が誕生した結果、市民の「NLDに長く続いてもらいたい」「民主化を進めてもらいたい」といった思いが、この結果に表れたのだと感じています。

──今後、ミャンマーはどう変わっていきますか
 現在、ミャンマーが抱える課題としては、まず経済面が挙げられます。「貧困からの脱却」「経済発展」「雇用機会の創出」という3つのテーマがあり、NLD二期目の政権がどう対応するのかに注目が集まるでしょう。一期目は、初めてということもあって、発足当初、若干のもたつき感があったのは事実です。しかし、二期目は多くの大臣がそのまま継続するでしょうし、つまり政策に継続性があり、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問もトップとしての経験もあるわけです。一期目以上に、円滑に業務を行うことができると考えますし、日本としても期待しています。
 さらにミャンマーが直面している大きな課題が、少数民族武装勢力に端を発する国内和平です。これには2つの側面があると考えており、NLDと国軍、国軍と少数民族武装勢力との関係です。1988年の軍事政権に反対する民主化運動を経て、NLDが発足したという経緯からも、NLDと国軍が一定の緊張をはらんでいるのは事実。そして、国軍と少数民族武装勢力の和解においては、NLD率いる文民政府と国軍との信頼関係の構築が基本となります。NLDがどのように国軍と協力していくかがポイントとなり、それゆえにスー・チーさんとミン・アウン・フライン国軍総司令官によるトップ同士の対話の積み重ねで、道が拓けていくことを期待しています。

「(2020年ミャンマー総選挙)選挙結果速報―国民民主連盟が再び地滑り的な勝利(長田 紀之)」のデータを参照し、弊社で作成 https://www.ide.go.jp/Japanese/IDEsquare/Eyes/2020/ISQ202020_036.html

──国軍に対してはどう考えていますか
 複雑な歴史的背景があるため、NLDとは緊張関係にありますが、我々はポジティブな面も見るべきだと考えています。双方難しい立場であるにもかかわらず、2015年のNLD政権以降、公式に軍部とNLDが互いに批判し合ったことは一度もないのです。そこに我々は光を当て、双方の信頼関係を構築していっていただきたいと思いますし、双方の様子を拝見していると実現できるのではないかと感じています。

──NLDの勝利によって、日本への影響、国際社会への影響をどう考えますか
 日本としては、歓迎する結果であり、全面的に支持していくのが我々の立場。そのスタンスにいささかも変わりはなく、一層強化していきたい。そうした思いが表れたのが、選挙2日後、世界に先駆けて伝えた菅総理大臣と茂木外務大臣からのスー・チーさんへの祝意でした。スー・チーさんも「非常に喜ばしく、感謝いたします。お二人によろしくお伝えください」とおっしゃっていたのが非常に印象的でしたし、総選挙が成功裡に実施され、文民によって選ばれた政党が引き続き政権を担うことを喜ばしいと思う気持ちは国際社会も同じだと思うのです。世界的に今は民主主義が求められますし、それを選挙で達成しているわけですから、歓迎されることはあっても、首をかしげる国はないでしょう。

▲総選挙後、数日間に渡り、シュエゴンダイン通りのNLD本部前は、勝利を喜ぶ支持者であふれかえった