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新型コロナウイルス、総選挙でどう変わる? ミャンマー経済の行方(P.2)

JETRO Yangon
Managing Director
田中 一史[Tanaka Kazufumi]

ASEANで稀有なプラス成長
第一次産業が経済をけん引

先行きが不安視されるミャンマー経済だが、IMFやADBなどの経済機関はASEANでベトナムに並びポジティブな数字を示した。果たしてどうやってミャンマーはコロナ禍でもプラス成長を保つことができたのだろうか。

 JETRO・田中所長によれば、下図の通り、ミャンマー経済はASEANのなかでもベトナムと同じプラス成長で、マイナスを食い止めた形。2021年は6%以上を見込むことから、よほど大きな問題がなければ、順調に成長していくことが予想される。
 背景にあるのが、第一次産業の堅調ぶりで、農業や水産業などが落ち込む経済をけん引した。「ミャンマーは労働力人口の6割強が第一次産業。製造業、サービス業で失速した分、第一次産業が雇用の受け皿になり、プラス成長を保った形です。

あと今年は自然災害が少なかったことも要因に挙げられます」。主力輸出産業である縫製業は今年8月までの数字が発表され、日本向けの輸出はほぼ横ばい、EU27ヵ国/英国向けはかなりの落ち込みが指摘されているが、実際は2020年3月以降、7月まで前年同期比14%減ほどで、そこまで大きな打撃にはならなかった。
 JETROへの電話やメールでの問い合わせは、マーケティングリサーチが増加傾向だという。ただ、最終的な進出決定については、やはり進んでおらず、現場を見てみないと判断できないというのも当然だろう。
 今後、JCCMなどによれば、日本人の来緬希望者は約2000人いるとされ、具体的に案件が動き出すのは往来が自由できるようになってからだと見込む。田中所長は「アフターコロナでは瞬間的にV字回復が期待できるものの、次期政権下でも無理のない堅実な経済成長を進めていくことになるだろう」と締めくくった。

国際通貨基金(IMF)とアジア開発銀行(ADB)による予測では、ミャンマーはベトナムとともにプラス成長が見込まれている

EME(Emerging Markets Entrepreneurs)and UMJ Ikeya Investment Ltd
Investment Director/Co Founder
池谷 仁[Ikeya Hitoshi]

スタートアップの可能性大
一気にスケールする市場

ミャンマー生まれ、米コーネル大学を経て、ゴールドマンサックスやモルガン・スタンレーなどで投資を担当していたEMEの池谷氏。ミャンマーのスタートアップを知り尽くすスペシャリストにVCの可能性などについて解説してもらった。

──事業内容を教えてください
 現在、ミャンマーにおいて、ベンチャーキャピタル(VC)やファンドで13社に関わっています。基本的に対象はスタートアップが多いのですが、すでに2社は一般的なスタートアップの規模ではなく、3年前に立ち上げた企業は従業員400名以上で、総額20億円以上の投資を受けています。
 もう1社は、デジタルコンシューマー向けのテック会社であり、月間の売り上げが3~4,000万円、創業時の従業員は15名ほどでしたが、今では150名という中堅規模に成長しています。

──ミャンマーの不況をどう考えていますか
 決して悲観的にはみていません。そもそもミャンマーの金融市場はレバレッジが効いていないので損失は小さく、ミャンマー全体のGDPの8割以上を占めるとされる財閥もキャッシュフローが厳しくなり、金融市場の解放が進むと予測しているからです。これまで海外への開放を拒否していた一部の経済界もコロナによって、開放せざるを得なくなると考えています。一番重要なのが、あらゆるセクターで海外からの参入を受け入れること。それはミャンマーにとって大きな意味を持ちます。

小規模店舗向けサービスのEZAY は数ヵ月で約2,500店舗と提携。今や月間売り上げは2,000万円近く

数ヵ月で2500店舗と提携
魅力的な地方のマーケット

──どういうことでしょうか
 ミャンマーは東南アジアのなかでも特に遅れており、外資がなければ絶対に世界に追いつくことはできません。例えば、2012年までミャンマーは携帯電話はもちろんのこと、固定電話さえ普及していませんでした。しかし、通信セクターの開放で通信インフラは東南アジアの水準に達しました。また、マイクロファイナンスでは、コンシューマー向けのローンが発達し、特にイオンマイクロファイナンスのおかげで、今では国民のほとんどがスマートフォンを持つことができました。まずはノンバンクセクターの規制緩和を進めてもらいたいです。特にコロナの影響で、個人と企業のバランスシートは悪化し、この状況を打開するためにも、MSMEと個人に向けた融資が必要不可欠です。

──ポテンシャルは高いということですね
 特にスタートアップには非常にチャンスが広がっています。コロナを経て、ニーズにも変化が訪れ、課題設定をリフォームできればスタートアップは千載一遇のチャンス。しかし、そこで足りないのが資金調達です。企業に対してのあらゆる投資、そしてローンもまだまだ足りていません。

──ミャンマーのスタートアップの特徴とは
 4~50年間、チャンスがなかったので、ハングリー精神が強い点です。投資資金としては、ミャンマーはASEAN内でもわずか1~2%しか流れていないと言われていますが、リスクを取れる起業家もいます。今や誰もがスマートフォンを持ち、ビジネスがスケールしやすく、弊社が関わるEZAY(ラストマイルデリバリーを支える小規模店舗向けサービス)は2019年の11月に投資し、当時は事業を開始すらしていなかったですが、今では約2500店舗と提携、月間売り上げが2000万円近くになっています。数ヵ月でここまで伸びるのがミャンマー市場の魅力。ヤンゴンだけだとマーケットは小さく、地方までカバーすればインパクトは大きく、想像以上に数字が上がります。また、選挙後は政策の柱が“エコノミーファースト”になると思うので、まだまだプラスの評価をしています。