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民間、ODA、止まらないミャンマー投資熱 競争激化の建設市場

未来を担う数々のインフラ
ODA注目案件

ミャンマー・インフラ整備の根幹を担っているのがODA(政府開発援助)案件。橋梁や港、道路、電力設備、上下水道、病院などに至るまで日本政府はミャンマーに多大な貢献を行ってきた。道路や橋梁、港、空港などを担当するJICAミャンマー事務所の安井所員に話を聞いた。

JICAミャンマー
事務所所員
安井伸治
YASUI SHINJI

物流網の整備が
経済成長に不可欠

 まずは日系企業とも深い関わりがあるティラワ経済特区(SEZ)関連では、バゴー橋の建設が挙げられる。これはヤンゴン市内タケタ地区とティラワSEZがあるタンリン地区を結ぶ橋で、現在使用されているタンリン橋の代替となるプロジェクト。これまで片側1車線で慢性的に渋滞していた交通事情を、2車線×2の4車線にすることによって、よりスムーズな移動が期待されている。完成予定は2022年初頭。

 東西経済回廊の道路整備も注目案件の一つ。タイとの輸出入はこの国の成長において不可欠だが、一方で物流網が課題だったのも事実。2018年には地方の橋が落下し死亡者が出る事故が発生、大きなニュースとなったのは記憶に新しい。1980年代の政変により円借款事業が一時凍結した後、十分な人材、予算が確保できない中で脆弱な橋が造られ、それらが現在も使われていることから、多くの橋梁には重量制限が課されており、大型トラックの往来には厳しい制約がある。そこで、下記の図の通り、円借款によりジャイン・コーカレー橋、ジャイン・ザタピン橋、アトラン橋を2車線×2の4車線とする改修が実施されており、2021年にはジャイン・コ―カレー橋が、2023年頃には残る2橋の完成が見込まれる。さらに、移動距離の短縮や、混雑する市街地の回避を図るため、バゴー・チャイトー間において、新ルートを通る道路と、シッタン川を渡河する新たな橋梁の建設が計画されており、アジア開発銀行とJICAがそれぞれフィージビリティー・スタディー(FS)を実施中。これらが完成すれば、タイとの国境にあるミヤワディーからヤンゴンへの移動時間は、現在の約9時間から1~2時間程度短縮すると見込まれている。

環状道路、港湾開発
未来を見据えた計画

 Feasibility Study段階ながら、注目案件となりそうなのが「ヤンゴン市外環状道路(東区間)整備計画」。ミャンマーは道路面積率が4.5%と低く(バンコク7.1%、東京18.4%)、幹線や生活道路といった階層性も欠落、著しい交通渋滞が発生している。さらにコンテナトラックは日中のヤンゴン市内の走行が禁止されており、円滑な物流が妨げられている。こうした状況において、同プロジェクト最大のメリットは、ティラワSEZと、東西経済回廊やヤンゴン~マンダレーの高速道路などの重要道路を、ヤンゴン市内を経由せずに直接結ぶこと。将来的には、ティラワSEZから多くの製品がミャンマー国内に運ばれるとされ、重要な道路になるのは間違いない。

 また、港のプロジェクトでは、約60億円の無償資金協力によりマンダレーのエーヤワディ川沿いに河川港を建設予定。現在、マンダレーには近代的な港がなく、荷揚げも人力に頼っていることから、クレーンなどの最新設備を導入した港湾を整備することで効率性が飛躍的に向上する。また、これまでは主に鉄道と道路しかマンダレーへの輸送手段がなかったが、船舶輸送が可能になれば、物流コストが下がり、価格競争力を生み出すことができる。また、ティラワ地区の港湾拡張も計画されている。市街地に面していて拡張余地の乏しいヤンゴン港が、将来的に飽和状態になるのは明らかであり、ティラワ地区港湾の需要が高まるのは必至。さらに、港湾施設のみならず、ヤンゴン川において灯台等の航路標識を設置する計画のFeasibility Studyも既に実施しており、実現すれば、現在は禁止されている船舶の夜間航行も可能となる見込み。これらプロジェクトにより、ティラワ地区の港湾物流はさらに拡大することが見込まれる。

 また、空港整備においても議論が進んでいる。話題のハンタワディ空港は日本政府とミャンマー政府が協議中。加えて、JICAは、最大の地方空港であるシャン州のヘホー空港整備のFeasibility Studyも支援している。シャン州は一大農業地帯であり、美しい観光資源も有するだけに、農作物の物流網の改善や、ビジネス促進、観光客の増加が期待される。

 また、都市部のみならず貧困削減という観点から地方での道路建設など、大小合わせれば相当数の事業を手がけているJICA。この国の発展に欠かせないインフラ整備において、JICAには大きな期待が寄せられている。

▲ジャイン・コーカレー橋の起工式。背景に見えるのが既存の橋で、東西回廊整備事業でタイに最も近い場所にある

▲多くの日本人ビジネスマンを悩ませてきたタンリン橋に変わる新バゴー橋の建設現場

▲ジャイン・ザタピン橋の現状。橋梁本体の構造上の問題から重量制限が課されており、橋台周辺の沈下も確認されている