経済成長には欠かせないミャンマー課題の一つ 物流2.0
電力などのインフラと並べられるミャンマーの課題・物流。地方の道路はおろかヤンゴン近郊でも未整備といった実情であるが、物流は改善してきたのか?JCCM運輸部会長の船山氏のインタビューやホットトピック、物流に関わる注目企業を取り上げ、さまざまな側面から現状をお伝えする。
果たして数々の難問は
解決しているのだろうか?
物流・課題のすべて
昨年も取り上げた物流特集。
その時も課題が山積していることが明らかとなったが、1年経って大きな変化はあったのだろうか?
ミャンマー日本商工会議所(JCCM)の運輸部会長を務めるオーシャンネットワークエクスプレス・ミャンマーの船山氏に話を聞いた。
Ocean Network Express
Managing Director
船山 求[Funayama Motomu]
課題は改善傾向だが
実施されていない現実
―陸送での課題を教えてください昨年と大きくは変わりませんが、通関が今もボトルネックとなっています。2016年に電子通関システム・マックス(MACCS)が導入され、徐々に改善しているのは間違いないのですが。

書類検査や現物検査において、何人もの税関査定官(Appraiser)のサインが必要なため、会議や出張などで一人でも不在となった場合(に書類がストップすることがあります。また、税率においては各品物に番号を振って、関税率を決めるわけですが、その確定にも時間がかかっています。世界各国では、AEO制度(貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された事業者に対し、税関手続の緩和・簡素化策を提供する制度)を導入しているので、そうした制度も取り入れてほしいですね。
―ほかに陸送でホットトピックはありますか
タイ西部のメーソットとミャンマー東部ミャワディーを結ぶ第2友好橋が3月に開通式を行ったのですが、実際はまだ使われていません。何が問題なのか不明であり、具体的なスケジュールもまだわかっていません。

現在は準備段階であり、詳細が判明していない状態であり、つまり実施されていません。当初はティラワ経済特区(SEZ)まで乗り入れられるといった話も出ていましたが、詳細は不明。残念ながらヤンゴン本港までは該当していないようです。
―乗り入れについては、ミャンマーは右車線、タイは左車線といった問題があります
そうですね。ただ、10年以上前に香港に駐在していたとき、香港と深センが同じ状況で、香港が左車線、深センが右車線でしたが、当たり前のように境界を行き来していましたので、それは時間の問題だと考えています。
―ヤンゴン市内でのトラックの通行規制は変わっていませんか
そうですね。今も午前6時から午後9時までの走行が禁止です。ただ、慢性的な渋滞が続いているため、現時点での改善は難しいでしょうね。

かつてに比べて、だいぶ走りやすくなりました。現在、建設中のバゴー橋が開通すると、より利便性は高まり、ティラワ港へのさらなる期待が持てます。しかし、ヤンゴン市内の南北の道路事情が今もよくありません。とりわけサウスダゴンやイーストダゴンの工業団地からティラワを結ぶ道は整備が進んでいない区間があります。さらにティラワSEZからティラワ港のMITT(Myanmar International Terminals Thilawa)、新たにできたTMIT(Thilawa Mult ipurpose International Terminal)への道路も狭くボロボロ。こうしたところは改善すべきポイントです。
―まだまだ問題が山積していますね。では、海上輸送についてはどうでしょうか
輸入量は着実に伸びています。輸出量は去年の前半は足踏み状態でしたが、後半からは増えました。
―ヤンゴン本港での問題はありますか
現在、パンクするような取引量になっていませんが、2、3年以内にはオーバーフローするかもしれません。そうした背景からもティラワ港が拡張されたので、プラスのポイントではありながら、道路事情ほかティラワからヤンゴン市内の工場団地までのアクセスに問題があることから、お客様が思ったよりも利用してくれていないという実情があります。全体での取引量では、まだ10〜20%といった感じでしょうか。そのためダウンタウンのヤンゴン本港が今もメインとなっています。

これも長らく続いていますが、輸出入のバランスが悪いことですね。仮に品物が10入ってきても、4しか輸出できていないイメージ。そうなると自ずと物流コストが上がってしまいます。輸出するというケースが圧倒的に少ないわけです。