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ミャンマー進出検討企業、最大の懸念点 電力の現実

全土に届かない電力
膨らみ続ける赤字財政

 こうした老朽化による電力ロスは、送配電でも起きている。図Dは、2009年から14年までの送配電ロスの推移を表しており、09~10年では20%で、仮に100を送電した場合、20がロスとなり、実際には80しか届かないこととなる。13~14年では、14%(実際は直近でも約15%といわれている)であり、ミャンマー以外のASEANではすでに10%を切っており、日本においては4%ほど。ただでさえ足りていない電力がロスしているため、非効率なのはいうまでもなく、発電所の建設とともに改善しなくてはならない喫緊の課題。

 こうした電力ロスが散見される一方で、そもそも届いていない地域がまだまだ存在する。図Eは送配電系統整備状況を示しており、赤色が230kV、青色が132kV、緑は66kVの電線を示し、電圧数値が高い方が長距離で大容量の電力を送電できる。ODAにより、一大電力消費地のヤンゴンと、中北部の水力発電地帯とを結ぶ最高電圧の500kVの送電線・変電所の整備を支援し、ヤンゴンやマンダレー市内の配電系統を強化している。

 現在、ミャンマーの電化率は約43%といわれている。モン州より南部のタニンダーリ管区をはじめ、多くの地方部においては送配電系統が未整備で供給されていない。また、43%の電化率は送配電系統によって世帯に供給されている数字であり、分散型電源(ディーゼル、ソーラーホームシステムなど)による自前の電源確保を含めれば、約7割の世帯には1日4時間以内の電力供給があるという。つまりは地方の送配電系統が届いていない地域ほど各個人の自己負担によって補填している状態で、そのコストが世帯負担であることを考えれば、決して好ましい状況ではない。ODAでは地方部における送配電網系統整備の支援も行うことで、電力アクセスの向上にも貢献している。
 水力発電所の割合が高いことをはじめ、設備の老朽化、送配電の系統の未整備が、停電の主な原因となっており、早急な投資が必要なのは明白だが、根本的な問題として挙がるのが政府の予算不足。
 6月25日に電力料金の値上げがようやく決まったが、これまでこの国の電力財政は赤字の一途をたどっており、2016年頃から供給コストと販売価格が逆転する逆ザヤ現象が発生(図F)、電力を供給すればするほど政府補助金で赤字を賄う状況だった。図には出ていないが、赤字は17年には約300億円相当、18年には約400億円相当となり、電力料金の値上げが電力セクター最大の課題となっていたなか、今回の施行に至った形となる。
▲2015年で収支はマイナスとなり、赤字になっていることがわかる。こうした事情からも、今回の電気料金の値上げはいたしかたないところであり、さらなる投資に期待したい

 こうした実情をかえりみても、ミャンマー政府の予算だけでは十分な設備投資を行うことは難しい状況であり、外国企業も含めた民間投資の拡大が望まれる。外資のさらなる誘致も見据えて、2018年、政府はSDGsの枠組みを活用し「Myanmar Sustainable Development Plan(MSDP)」を発表。続けて官民連携(PPP:Public-Private Partnetship)の制度整備を推進すべく、「Project Bank Notice」の通達を発出し、優先プロジェクトの明確化や民間投資案件のプロセスの透明化、民間投資案件への政府サポート体制の確立を目指している。