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官民合わせた8,000億円支援がついに目に見える形に 2019年、動き出すODA

Official Development Assistance(政府開発援助)ことODA。2016年に日本政府から発表されたミャンマーへの8,000億円の支援は、大きなインパクトを持って報じられた。毎年1000億円以上もの事業がこの国で行われ、それは日を追うごとに形となって現れている。現在の進捗とともに、ODA案件に関わる注目企業を紹介する。

JICA・唐澤所長インタビュー
ODA案件は順調に進行、中国との競争はどうなる?
具現化する日本の支援

JICA
唐澤 雅幸
ミャンマー事務所長
1986年より、旧OECF(海外経済協力基金)に所属。JBIC、JICA において、南西アジア及び東南アジア地域における円借款業務などを担当。2017年4月より、ミャンマー事務所長として各分野の指揮をとる。

目覚ましい動きで進行
農業支援にも注力する


―ミャンマーへのODAの現状を教えてください
 2016年に日本政府から発表された2020年までの官民合わせて8,000億規模の支援については、毎年1,300〜1,500億円程度の有償資金協力(円借款)、100億円程度の無償資金協力、さらには技術協力という形で進捗しています。内容としては、ヤンゴン市内の都市開発、運輸セクターと電力セクターの充実を三本柱としつつ、一方で地方の農業・農村開発セクターにも注力し、金額的には電力セクターにも匹敵するものとなっています。

―農業支援の具体的な内容とは
 バゴー管区、シュエボー地域(ザガイン州)の灌漑施設の修復、道路の整備、農業機械の提供など、サプライチェーン全体を強化する取り組みを進めてきました。農業に関連するさまざまなインフラ整備事業から、さらに農家向けの2ステップローンについても支援しています。近年では地方の若年層が国外に流出していることから、早期に生産性を高めるための機械化を進める必要があります。

―昨年から今年にかけて、起工式などのイベントが増えてきた印象です
 過去に策定したマスタープランやフィジビリティスタディ(F/S)に従い形成し資金協力の対象にしてきた案件が、より具体的な形となってきています。今年は土木、建設といった大きなインフラ工事がいよいよ始まり、その進捗が明確に見える年になるでしょう。例えば、ヤンゴン・マンダレー鉄道の南側区間の整備事業は、3工区に分け、2022〜3年の完成に向けて着々と進行中。残り北側区間の工事についても今年入札が行われます。ヤンゴンの環状鉄道では、特に東側を中心に軌道改修工事が始まり、今年開始する信号整備と合わせて2021年の完成を目指しています。
道路や橋梁分野では、ドーボン橋(新タケタ橋)はすでに完成済みですが、今年2月には、2021年完成予定のバゴー橋の建設工事が着工されました。橋梁からティラワ経済特区(SEZ)につながるアクセス道路の改修は今年6月の4車線開通を目指しています。

―目覚ましい動きだと思います
 それだけではありません。さらにヤンゴンからタイの国境に至る東西回廊については、JICAが手がけるモーラミャイン以北の3つの橋梁架け替えのうち、1橋が着工済みで2022年完成の予定。残る2つの橋も入札手続きが進んでおり、2023年の完成を目指しています。また、すでにミャワディーの国境では電子通関システム・MACCSが機能し、タイ政府が建設したタイ・ミャンマー友好橋もありますし、いよいよ東西回廊が物流の幹線として“魂がこもる”段階。これは、結果的にティラワ経済特区(SEZ)の付加価値をより高めることにつながると期待しています。東西回廊はミャンマーから国外アクセスへのゲートウェイでもあり、それはタイにとっても同じです。

経済成長なくして和平なし
ラカイン州など地方も支援


―JICAは実に幅広い事業に関わっています
 例えば教育・保健分野においても案件数は多岐に渡ります。教育分野では、ミャンマーの初等教育プロジェクトを通じてミャンマーの専門家と一緒に全教科の教科書を改訂しており、影響の大きなプロジェクトだと考えています。
また、保健分野においては、地方での総合病院の建設支援を行ってきました。ハードの協力に加え、5Sなど、ソフト面での支援も行っています。先日ヤンゴン市内で“新専門病院”の起工式が行われましたが、これは患者数の多い心臓外科、脳外科に特化し、これまでの総合病院から分離する形で、専門病院の立ち上げを支援するものです。ソフトである技術支援として、博士課程の医療従事者を育てるため、日本の複数の大学の協力を経て、人づくりにも寄与していきます。こうした幅広い案件に加え、昨年からはラカイン州向けの支援も規模を拡大しています。

―そうですね。ミャンマーが世界的な批判にさらされるなか、日本は早々に“支援”というスタンスを打ち出しました
 ラカイン州向けの大型協力は、道路、配電、給水という3分野での小規模インフラの整備を通じ、州の総合的な底上げを図ろうとするものです。金額としては100億円強。ただし、地方への支援はラカイン州だけではなく、貧困率が高いチン州や、和平協議と経済成長のよい循環が生じつつあるモン州、カレン州、タニンダーリ管区に対するサポートも拡大しています。

―知的財産権の整備といったことも着手しています
 新たな知財法はすでに3法案が認可され、1法案を残すのみ。今後は運用面について課題が出てくると認識しており、今後も専門家のアドバイスを受けつつ、日緬共同イニシアチブなどを活用しながら議論していくこととなるでしょう。

―JICAが支援しているというミャンマー産のジャムを見たことがあるのですが、それはどういった位置づけなのでしょうか
 シャン州産のジャムだと思いますが、目的は農家に麻薬の生産をやめさせ、代替の作物を生産していくという支援の一環です。

―ミャンマーを代表する官民連携プロジェクトといえばティラワSEZです。こちらは好調と聞いています
 おっしゃる通り、ティラワSEZは年々入居企業を増やしています。現在では日系企業に限らず、多国籍化しつつあり、ゾーンBの入居状況も好調です。

―「証券監督能力強化」といったこともありますね
 ヤンゴン証券取引所はすでに開始しておりますが、上場企業がわずか5社と少ないため、現在は未上場企業に上場を促すような支援を行っています。