バックナンバーはコチラ

劇的に変わりゆく「児童・初等教育」-ミャンマーの未来を占う最優先課題-

国の近代化において、最も重要な位置づけにあるのが教育。人材の育成こそが国の発展を支えるのは自明であり、国家の根幹事業と言えるだろう。一体、これまでのミャンマーの教育とはどういった実情だったのか?さまざまな視点から現状を紹介する。

 ミャンマー人スタッフから「問題が起きました」と報告を受け、「じゃあ対策はどうする?」と返答すると、スタッフが言葉に詰まるシチュエーションがビジネスシーンで多々あり、そうしたケースを日常的に経験している日本人駐在員は少なくない。原因として、一般的に言われているのが、教育の問題。ミャンマーでは長きに渡り、詰め込み型の授業が続き、自発的な発想を持つ人材が育ちにくい環境だった。そうした問題は決してこの国だけには限らないが、ミャンマーでは経済の発展とともに外資企業がローカルスタッフに対して求めるスキルも上がり、「自ら課題を探し、解決策を見つけ出す人材」のニーズが確実に高くなっている。

 このような現状を政府、企業も十分に理解し、取り組みがなされてきた。JICA は20年近く続いてきた教育方針の改訂を支援。インターナショナルスクールは大学さながらの設備を整え、先進的な授業を実践。学習塾での指導方針は「子ども自らが興味を持つ」ことがテーマで、より戦略的な形で行っている。いずれの教育現場でもすでに進むべき方向性が共通し、「創造力」「コミュニケーション能力」などを有する“21世紀型スキル”の獲得を目指す。ただし、留意しなければならないのは、何事も急には進まないということ。教育は機械ではない。導入したからといって、新製品ができるわけではなく、長期的な視点で浸透させていく必要がある。

 そして、実は日本もミャンマーと遠からず似たような問題を抱えている。そもそも日本で21世紀型スキルが注目されるようになったのは、2014年前後。その重要性がクローズアップされてからわずか数年しか経っておらず、もちろん現場の日本人ビジネスマンでそうした教育を受けたものは皆無。さらに俯瞰すれば、21世紀型スキルが欠けている今の日本経済は「失われた20年」から出口を見出せず、多くの企業がイノベーションを起こせないまま時間ばかりが過ぎてきた。
 教育は時代に合わせて常にアップデートしていくものであり、人に21世紀型スキルを求めるのであれば、教える側も自らが実践し示していくことが要求されるだろう。ミャンマー人スタッフが自発的に考えることができない本当の理由は、実は自分自身にあるのかもしれない。そうした観点から今回の特集が、教育を再考する一助になれば幸いである。