バックナンバーはコチラ

日本からの注目度が急上昇! ミャンマー観光ビジネス

観光産業のキーワードはヒト・モノ・カネの流動性 ミャンマー側の見解と課題
観光ビザ免除で注目を集めるミャンマーの観光産業。しかし、欧米人観光客の減少や空港稼働率の低さなどの課題が山積しているのも事実。日緬双方の視点から俯瞰するJTB ポールスターのチョー社長に、ミャンマー観光の課題と対策を聞いた。

JTB Polestar
代表取締役社長
チョー・ミンティン U Kyaw Min Htin

高額な航空運賃はなぜ?未整備の空港と低需要

 JTBポールスターの社長でありながら、ミャンマー観光業連盟の理事も務めるチョー・ミンティン氏。ミャンマーで初めて日本語検定1級を合格、テイン・セイン前大統領の通訳をし、現在はホテル・観光省のオウン・マウン大臣の片腕として精力的に活動。先日、ヤンゴン国際空港で行われたビザ免除の式典では、イベントの仕切りも担当するなど、日本とミャンマーの架け橋として活躍する業界の重要人物である。
 アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相が推進する経済の活性化という観点から、政府にとっても観光産業は重要な事業の一つ。チョー社長自身も長らく観光業に携わってきたことから、「観光が国益につながることは間違いありません。政府として門戸開放政策の一つがビザの免除。今後も政府が周囲の意見を聞く耳を持ちながら進めていってほしい」と期待を込めている。
 そもそも今回のビザ免除については、政府内でも4、5年前から賛否両論が起きていた。チョー社長を始め、観光産業に関わる多くのビジネスマンが粘り強く訴え、ようやく念願を果たした格好となった。「政府が理解してくれました。ただ、本当に国益のためになるかというのは、1年先を見てみないとわかりません。しかし、観光業連盟はビザ免除を継続すべきだと考えていますし、そうなることを期待しています」。
 観光ビザ免除は確実に業界に明るい話題を振りまいたが、この国においてはまだまだ課題が山積しているのも事実。チョー社長は、高額となっている国内運賃の問題を挙げ、背景には需要の低下にともなう低い回転率を指摘する。通常、飛行機は1日12時間ほどを稼働(飛行)しているのが望ましいとされているが、ミャンマーでは平均6、7時間。さらにミャンマーの主な観光地であるバガンやインレー湖の空港の強度も課題であり、ボーイングやエアバスなどのジェット機を離発着させることが不可能。こうした問題から飛ばせる飛行機も限られ、低い利益率が浮き彫りとなっている
 また、燃油の運送コストも課題の一つ。ティラワ港に運ばれた燃油は、一度トラックに入れられ、ヤンゴン国際空港まで陸路を行かなくてはならず、そのコストがトラック1台200〜300ドルかかるという。多くの国で採用されているやり方は、港からパイプラインを通じて空港に直接届ける方法であり、この国ではまだ整備されていない。現在、パンライン川を船で移動し、運搬するためのフィシビリティスタディ(F/S)の段階とのこと。

投資が先か、利益が先か 時期尚早という決断

 多くの人が望んでいるLCC導入も厳しい。本来、LCCは回転率の高さによって利益を上げるビジネスであるが、前述したようにまだまだ需要が低く、投資に見合わない。さらにLCCは通常、第2空港(セカンダリーエアポート)を利用するのが一般的だが、ヤンゴン国際空港しかないため、物理的な候補も見当たらない。そして、我々外国人にとって常に疑問が拭えないのは、低価格なミャンマー人との航空運賃の違い。それについては、チョー社長自身も長年に渡って、航空会社に訴えているが、返ってくる答えは「ミャンマー人は利益ギリギリ。外国人でも少しの利益で、それでも稼働率が低いときは採算が合わない」という。航空会社は、投資をして利益を出すべきか、利益が出てから投資をすべきかという「鶏が先か、卵が先か」状態であり、リスクを取るのは時期尚早のようだ。「まずはヤンゴン空港の稼働率を上げることが先決。今はまだ20〜25%といわれています」。
 投資という観点からも未整備な問題が残る。この国では法律によって、すべての銀行で同一の金利が定められ、年利は13%。仮に数十億、数百億のプロジェクトであれば、13%の金利分は当然カスタマーが負担することとなり、こうした問題も価格を下げられないボトルネックとなっている。「リゾートでの価格が高いのは、乾期しか営業できないことと、金利の問題もあります。回転率も同様ですが、すべてがつながっているんです。ヒト・モノ・カネの流動性がなければ、どうしたって価格は下げられないんですよ」。
 ミャンマー観光にとって喫緊の課題が欧米人観光客の減少。ラカイン問題に端を発した欧米諸国の報道によって、観光客の減少に歯止めがかからず、昨年より深刻なダメージが続く。そこで観光業連盟がミャンマー政府に提案しているのが、「欧米14ヵ国の観光ビザ免除」。これはイギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリアなどミャンマーに入国している外国人トップ20ヵ国の欧米諸国が対象で、日本や韓国と同様に1年間の観光ビザ免除を適用するもの。10月31日より、イタリアのネオス航空がミラノ〜ヤンゴン直行便を運航させ、欧米観光客の集客には追い風が吹いており、ミャンマーの観光産業にとっても、少しでも明るい話題につなげたいところだろう。「ガパリが2016年のトリップアドバイザーでNo.1のビーチに選ばれましたし、そこにインフラが整備され、一定のサービスがあれば、欧米からも観光客は来ますし、政府に期待しています。きっと14ヵ国のビザも免除になるでしょう。実際に欧米から来てもらって、ミャンマーを見てもらいたいんです」

▼10月1日、ヤンゴン国際空港で行われたビザ免除の式典。日本からは丸山大使も駆けつけ、ミャンマー観光をPRした。