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売れ行きは毎年倍増、日系自動車の需要が高まる 好景気が続く新車販売

圧倒的なシェア、日本が誇る世界ブランドTOYOTAの躍進
ミャンマーの自動車市場の実に65%を占めるというトヨタ車。法改正と関税撤廃により、新車販売も好調の一途をたどっている。この地において事業の根幹を司るTTAS Co., Ltd. の加藤Managing Director(以下MD)に、実情や今後の展開などを聞いた。

TTAS Co., Ltd. Managing Director
加藤大樹 Kato Daiki
 

RUSH

新車を2万ドル以下で販売
輸入車にも規制緩和の波

──新車販売数でのトヨタの位置付けを教えてください
 ミャンマー新車協会のデータによると、SUZUKIがトップで、次いでトヨタとなっていますが、KIAが2位の可能性が高いとされ、トヨタは実質3位。KIAは協会に加盟していないため、実際の数字がわからないのです。次いでフォード、日産、マツダ、シボレーが続きます。2018年から導入された右ハンドル中古車の輸入規制が進み、新車販売にとっては追い風となりました。一時期は、ヤンゴンに約200店舗あったといわれるCSC(中古車ブローカー店)は、今では30店ほどに減少し、ほとんどが廃業状態。新車の販売店に切り替わったといわれています。

──新車販売の推移はどうでしょうか
 2011年は4台、12年は7台と一桁でした。14年に新車販売が正式に解禁され、136台。18年は1,200台を目標にしており、毎年倍々のペースで増えている状況です。8月から日曜日も営業日に変更して、高まる需要に対応しています。

──ミャンマー人の購買力をどのように捉えていますか
 私がミャンマー担当になったのは13年8月。そのときは10年以上経った中古車のマークⅡが10万ドル以上しました。政府は税率を年々引き下げ、AECによるASEAN域内生産車の免税などもあり、今は新車を2万ドル以下で販売できるようになりました。国の経済発展とともに、客層が確実に変わってきていることを感じています。
 定期的にミャンマープラザで新車販売のイベントを行っているのですが、エントリーモデルの新車を20~30代の若い夫婦が購入しています。ローンが組めるようになったのも大きな要因の一つです。現在では多くの銀行とタイアップし、頭金15%で購入できるようになりました。もはや庶民でも新車を買うことができる環境になりつつあります。
 我々の業界では、年収3,000ドルを超えるとバイクから自動車に移行するといわれていますが、ヤンゴンはその時期に差し掛かりつつあります。ただ、それはヤンゴンの話で、地方ではまだまだ時間がかかると思っています。

──TTASの特徴を教えてください
 創業から66年の歴史があり、サービス力の高さが強みです。年間の修理台数は15,000台ほど。自動車業界では3Sと言いますが、新車販売、修理、部品販売が商売の根幹となり、それぞれのレベルはミャンマーでトップクラスであると自負しています。さらに我々は板金塗装工場、物流、トレーニングセンター、システム開発など自動車のバリューチェーンを整えており、現在のミャンマーにおいては唯一無二の存在だと思っています。
 
──今後、どういったことに注力したいでしょうか
 3点あります。1点目は、3Sに磨きをかけ続けること。「カイゼン(改善)」に終わりはないですし、「一人の百歩より百人の一歩」が大事と考え、さらなる向上を目指しています。2点目が拠点網の拡大。ミャンマーでは、50万台超のトヨタ車が走っているといわれていますが、我々はそのうちのわずか3%しかケアできておりません。残りの多くは、ローカルのガレージに行くような状況です。これは健全な姿ではないと考えています。質の悪い部品や修理で事故が起きれば、トヨタ車の評判を落とすことにもなりかねません。ガレージの場合、中国製のコピー部品を使うことが多く、ケースまでも純正に似せていることから、一見して偽物とは見分けがつきません。ロゴも普通にトヨタと入れています。それらは国境で関税を払わずに入れてきているケースも非常に多く、我々が価格で太刀打ちするのは難しいわけです。しかし、お客さんはトヨタの純正品を使っていると思っています。「なぜこんな簡単に壊れるんだ?」となりますよね。ミャンマーの交通事故での死者数が日本よりも多いというデータもあり、看過できない事態です。現在、我々のサービスセンターはヤンゴンとラインタヤの2ヵ所のみですので、3店舗目に着手したいと考えています。
 3点目は新規事業への取り組みです。ミャンマーのGDPは未だ1,300ドル程度ですが、ほとんどの人がスマートフォンを持ち、デジタルの情報感度が高い。中古車のトレードインを促すアプリや豊田通商も出資するGrab Inc.との提携も可能性を秘めていると考えます。まだまだトライアルの段階ですが、次世代のビジネスモデルを作っていきたいと考えています。また、2年後には、ここの建物を近代的なものに造り替えます。ショールームはもちろんのこと、修理場やトレーニングセンターなども併設した大規模な旗艦店に。お客様のみならず、スタッフのモチベーションが高まるような最新鋭の建物にしたいですね。

▼TTAS で従事するテクニシャンたち。現在、こちらでは49人のテクニシャンを抱え、総勢157人で対応にあたっている

▼バハンのパールコンドのほぼ向かいにあるTTAS。ショールームのほかトレーニングセンターなどもあり、教育にも余念がない

全体の65%がトヨタ車
人材教育にも注力したい

──他に推し進めたいことはありますか
 やはり教育ですね。すでにCSRの一環として、幼少期に教育機会を与えられなかったテクニシャンたちに対し、文字の読み書きから教えています。最近では、厳しい生い立ちから一人前の立派なテクニシャンになるまでのショートムービーを作成し、フェイスブックでの配信も予定しています。
 こうした活動を通して、若者たちに夢を与え続けていきたい。さらにトヨタのテクニシャンになりたいと思って、弊社に来てもらえれば理想的ですよね。また、海外派遣研修にも力を入れ始めました。日本、タイ、シンガポール、インド、カンボジアなどにスタッフを送って鍛えています。

──カイゼンという言葉も理解していますか
 もちろんです。トヨタの教育プログラムは日本語が多いため、日常的に彼らもカイゼンと言っています。トヨタの文化が確実に根付いているのを日々実感しています。ちなみに日曜日も営業しようと言い出したのは、ミャンマー人スタッフからなのです。自発的にそういった提案が出てくることで、会社として正しい方向に進んでいることを確認できています。

──確実にスタッフが成長していますね
 それだけではありません。ラインタヤにトレーニングセンターを持っており、ディーラーのテクニシャンに対しても海外から講師を呼ぶなどしてトレーニングを行っています。また、“寺子屋プロジェクト”と呼んでいるのですが、技術大学の学生やローカルのガレージで働く人たちを招いて、我々のプログラムを教えています。それもまたCSRの一環だと捉えています。この国の発展になりますし、いい人材がいれば弊社にも入ってもらいたいですね。

──事業展開をする上で、法律面で難しさはありますか
 税制やルールが頻繁に変わることでしょうか。最近は落ち着いてきましたが、事前にアナウンスなく施行されるケースが何度もありました。また、ヤンゴンのナンバープレートが取得できないことも挙げられます。現地生産車は問題ないのですが、輸入車については別でナンバープレートの取得が必要となります。この問題は解決されると国からアナウンスされたのですが、まだ状況は変わっていません。
 
──ミャンマーにおいても、トヨタブランドの強みを感じますか
 トヨタを知らない人はいないのでは、と思うほどですよね。正確な数字があるわけではないですが、この国の65%がトヨタ車といわれています。日本では約45%ですから、日本人以上にトヨタを愛してくれているわけです。トヨタ車は価格は少し高めですが、壊れにくいですし、中古になっても価格があまり落ちません。どんな郊外に行ってもトヨタの部品ならどこでも買えます。これは何よりも貴重な財産です。

──将来的な展望はどうでしょうか
 ミャンマー人は識字率が高く、優秀で、素直な人材が多い。必ずや、いつか4人に1人が車を所有するタイのような国になるはずです。我々も引き続き、この国の成長に貢献していきたいですね。
 

▼(左)高い技術指導を受けたテクニシャンたちが、日本と同等のクオリティで整備を行う。土日対応というのがありがたい
(右)広大なスペースに所狭しと駐車されているトヨタ車。レクサスなどの高級車も多く見かけられ、購買力の高さを感じさせる