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【特集】ミャンマー進出の新たなステップ
地方に投資してみませんか?

日本の1.8倍の広大な国土に、独自の風土や文化に富む7つの地域と7つの州、1つの連邦直轄領があるミャンマー。外資系企業の投資はヤンゴンに集中しがちだが、地方にも目を向けてほしい。

税制優遇策も発表

2013年頃から始まったミャンマー投資ブーム。これまでヤンゴンを中心に展開されてきたが、地方へ熱い視線を向ける企業も増えてきた。現段階ではインフラ面でのデメリットも大きいが、豊かな人的資源と広大な土地、恵まれた自然が注目を浴びている。
ミャンマー政府も、国の発展には地方の開発が不可欠と認識しており、この3月には新投資法に基づき、税制が優遇される「より開発が遅れた地域」(主に地方が該当)を指定する通達を発表。計画財務省投資企業管理局(DICA)も外資系企業がより地方で活動しやすいよう、地方に支所を次々と開設した。現時点で、ヤンゴン、ネピドー、マンダレー、タウンジー、モーラミャイン、パテイン、モンユワ、ダウェー、パーアン、バゴー、マグウェーと11ヶ所にのぼる。これらの支所では、会社の設立申請を始めとするさまざまな手続きが可能だ。

盛況だった地方投資フェア

 さらにミャンマー投資委員会はJICA と協力し、2015年に成功を収めたマンダレー投資フェアに続き、今年2月にはシャン州投資フェアを開催。内外から多くの参加者を集めた。脚光を集め始めているミャンマーの地方投資で、他社に先んじるのは“今”なのかもしれない。

ネピドー 株式会社京果食品

シャン州で生産した生鮮野菜や果実などを原料にして、ネピドーの工場で冷凍加工食品を製造し、日本へ輸出。https://www.kyoka-sk.co.jp

シャン州の野菜を首都で加工

「野菜の生育に適した土地が豊富なこと、国自体が産業振興に努めていること、原料を供給してくださる農業従事者の生活向上にも繋がることなどが、冷凍野菜の加工のための生産基地を求めていた当社にとってふさわしいと判断しました」と進出動機を語るのは、同社の商品部門取締役を務め、現地の指導をされている松本佐六さん。野菜・果物の産地であるシャン州は電力や労働者確保の点で問題があり、また、生鮮野菜をいかに早く加工するかがポイントとなる冷凍野菜にとってはヤンゴンは産地から遠すぎるということで、ネピドーに決めたそうだ。

松本さんによるとネピドーの人は「正直者が多いが、競争意識がなくてのんびりしている」とのこと。まだ産地とのインフラの整備や圃場の水利管理などに難点があることや、気温が予想以上に高いこと、農薬などが未整備、といったデメリットもあるが、政府関係者とコンタクトがしやすく、従業員の確保が容易という利点があるという。

モーラミャイン 王子ホールディングス・住友林業グループ

ラテックス採取後のゴム植林木を製材・加工し、家具や内装材に使う集成材の材料となる製材製品を製造・販売。

モン州のゴムの木を有効利用

 同社は王子HD 傘下の王子木材緑化と住友林業シンガポール、現地企業モーミャチャイによる合弁会社だ。進出のきっかけについて、王子HD(ミャンマー支店)マネージャーの白井瑛里子さんは「原料となるゴム原木の豊富さと、ヤンゴンに比べて安価な労働力が期待できることに加え、モン州政府からの強い要請があったため」と説明する。モーラミャインの人たちは基本的に穏やかで、親族の繋がりを大切し、仏教行事を重視する傾向があり、モン族などの少数民族出身者の場合は、エスニシティを強く意識している人も多いという。

「現地語以外でコミュニケーションができる従業員が少なかったり、製造業における現場経験や高い技術を持つスタッフを見つけるのが難しいなど困難もあります。しかし、インフラや産業が日々発展していく変化の度合には目を見張るものがあり、一製造業としてその一端を担っているとの実感を得られるのはとても光栄であり、やりがいを感じますね」。

タウンジー シャンジャパニーズセンター(公益財団法人アジア・アフリカ文化財団)

日本語教育の普及および日本留学の情報を発信。https://www.aacf.or.jp

日本語教育の普及に尽力

公益財団法人アジア・アフリカ文化財団の国際協力事業の一環として運営。ミャンマー初の進出先にタウンジーを選んだ。センター長の市川淳太さんはきっかけをこう説明する。「私どもの財団が理念としてきたアジア・アフリカ世界への貢献という観点で、今寄与できる先としてミャンマーが浮上しました。たまたま協力いただいた方がシャン州出身であったことと、日本語教育がまだ十分ではない場所で種を蒔き育てるという使命にも合致することから、ここに決めました」。大都市に比べて町の規模が同財団の活動に適していたことと、現地協力者の幅広い人的支援を受けられるという利点もあったという。

 

「高原地域のためヤンゴンとは気候が異なり、体調管理には気を配る必要がありますし、インフラや衛生面で未整備なところが多いのは事実です。しかし、日本や日本語に興味を持って、真面目に通ってくる若者にたくさん出会えたのは本当によかったと思っています」。

バガン 株式会社エクセ

ヤンゴンのオフィスビルやサービスアパートメントのほか、バガンで「ティリピセヤサンクチュアリリゾート」を運営。https://www.exegroup.co.jp

人気の遺跡エリアへ1996年に進出

同社のバガン進出は1996年と、ミャンマー地方投資の先駆け的存在だ。現地代表の寺田敏秀さんによると、きっかけは「オーナーがイラワジ川の見事な風景に感銘を受けるとともに、スピリチュアルなものを強く感じ、ここでホテルを運営したいと思ったそうです」とのこと。ミャンマーきっての古都だけあり、プライドの高い人が多く、新しい人や物に対して拒否反応を示すこともあるというバガン。しかし、ここでホテルを運営できることは大変名誉なことで、「あのバガンティリピセヤの会社」とミャンマー人に認識してもらえるのは金銭では測れない価値があるという。

バガンはすでに観光投資ブームの只中にあり、今から進出する場合、他と同じことをやってもすでに遅い。じっくり戦略を練る必要がありそうだ。また、バガンは単なる観光地ではなく、歴史・文化的遺産であり、現地の人たちの信仰の対象であることも考慮した進出を考えねばならないだろう。

マンダレー グローバルイノベーションコンサルティングミャンマー

日系企業の進出および法人設立支援、市場調査、オフショア開発、バイリンガルITエンジニア育成、日本語学校の運営など。https://www.gicjp.com/jp/myanmar

IT人材と日系企業をマッチング

マンダレー工科大学から卒業生が働ける場を創出してほしいとの要望があり、日本側にとっても優秀なエンジニアを早期に発掘できるチャンスと考え、ヤンゴンに次いでマンダレー進出を決めたという。現在、同大のほか、ヤダナボンサイバーシティ大学など3校で日本語教室を運営。IT エンジニアに特化した就職フェアをマンダレーやヤンゴンで開催し、日系企業との架け橋にも務めている。次回開催は10月を予定。興味のある方は問い合わせを。

マネージングダイレクターである小田勝広さんによると、マンダレーの人たちは一般的に「おとなしく勤勉でピュア。学生が仕事を選り好みできるヤンゴンに比べてまだまだ買い手市場。優秀な人材が確保しやすいですね」とのこと。インフラに関しては満足できる状態とは言いがたいが、日系企業の競合が少ないので先駆けとなるチャンスも多く、今後の発展速度もヤンゴンにひけを取らないはずと予測している。

マンダレー チャムズソリューションミャンマー

入力・画像処理(葉書入力月10万枚や画像処理月80万枚など)といったBPO業務、WEB制作・システム開発、進出支援。https://chums.co.jp

商都ならでは優秀な人材を求めて

「ミャンマー進出当初にマンダレーの人たちと縁ができたことと、ヤンゴンに比べて企業数が少なく、工科大出の優秀な人材が確保できることから、ヤンゴンにも事務所構えるが登記はマンダレーで、と考えていました」と代表の鳥養純一さん。インターネットの固定網スピードがヤンゴンに比べても安定していることや、交通渋滞の少なさ、バイク通勤が可能で現地従業員の通勤が楽、といったメリットもある。

「あくまで主観ですが、マンダレー人は商家に生まれ育つ人が多いからか、ビジネス的思考が身についている人が多いと感じています」。国際線フライトの少なさや、タクシー料金の高さ、税務署が外国人慣れしていない上、頼れる日本人会計士がいないといったデメリットもあるが、同社では、ヤンゴン事務所と補完関係を築くことで解決しているという。「あと、マンダレーで重要なのは人間関係ですね。紹介がないと、仕事をしてもらえないこともありますから」。