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かつての栄光を取り戻せるか
ミャンマー・ライスビジネス最前線

今回のテーマ多種多様な出版物を手がけるミャンマーの印刷企業

今、ミャンマーのコメがアツイ

ミャンマーのコメは、GDP の31%を占める農業の中でも、全耕地の50%で耕す主要作物だ。年間消費量も210kg / 1 人と、周辺のどの国よりも多い。
ミャンマーの稲作には雨期作と乾期作があり、雨期作は5~ 6月頃から播種が始まり、10~ 11 月頃に収穫。乾期作は11~ 12 月頃に始まり、3 ~ 4月頃に収穫する。乾期作は灌漑設備のある地域でのみ行うことができ、2 期作が可能。灌漑設備がない地域は、豆などとの二毛作となる。
民主化が進み始めて以降、JICA は様々な農業関連支援を各地で実施。稲作関連事業にも、日系企業が進出してきている。2013 年には45年ぶりに、三井物産とミャンマー農業公社MAPCO が日本へのコメ輸出を再開。ティラワ工業団地には、2016年にクボタが農機工場を稼動させ、丸紅の肥料工場も2017年の完成を予定。サタケも2016年、ヤンゴンにショールームを開設した。コメは今、ミャンマーで最も“アツイ”生産品かもしれない。

かつての栄光を取り戻せるか
ミャンマー・ライスビジネス最前線

ミャンマーの主要産業である農業には、JICA から様々な支援が入っている。コメにおける現在の問題点と将来への展望を、エーヤワディ地域で優良種子普及のために活動されている専門家の岡田氏に解説してもらった。

農民参加による優良種子増殖普及システム確立計画

稲作で用いる種子は、異品種が混じらないことが重要。品種が混じると様々な弊害が起こる。たとえば、生育スピードの違う品種が入り込むと収穫時に生育状態が異なるコメが混じり、収量の減少や品質の低下の原因になる。プロジェクトでは専門家の技術を向上させ、農業技術を農家に指導する各地域の普及員の研修なども実施。優良種子の増殖・普及システムの強化を図る。

現在の問題点は?

大きく分けて6点指摘できる。

(1) 優良種子の不足:農家がもみ生産に使う、政府の検査に合格した「保証種子」が不足している。自家取りの種子を長年使用すると収量が落ちたり、赤米が混入したりする。本プロジェクトが支援した種子生産の研修や増殖計画が実を結ぶことを期待している。

(2) 農村インフラの不整備:安定した栽培を可能にする農道や橋の建設に力を入れる必要がある。また、コメは収穫して半年ほど保管できれば高価格で販売されるため、穀物倉庫の建設も重要。本プロジェクトでも種子倉庫の建設・整備を実施した。

(3) 普及サービスの不足:農業指導する普及員の数が少ない。集落の中核となる農家を通じての指導、精米業者・肥料・農薬会社と連携した栽培指導などが効果的。今後は、インターネットを通じた情報発信も重要に

(4) コメ価格の低さ:農家が意欲を持てる価格にしなければならない。品質に応じた価格設定が、農家の意欲を高めるはず。精米業者の力が大きいのも問題。もみ買い取り時の検査を、政府が指導する必要性も感じている。

(5) 高利な民間ローン:洪水などの災害や病気で返却不能となり、土地を没収されるケースが少なくない。最近増えている、政府などの公的機関による低利ローンに期待したい。

(6) 人出不足:民主化で、都市部の建設現場や工場などへの出稼ぎが増え、田植えや収穫などでの人員確保が難しくなっている。機械化や、農家の収入向上を可能にすることができる高品質なコメの生産が必要。
目指すべき方向性は?

低投入型で、安全とバランスの良い稲作が不可欠。例えばエーヤワディー地域におけるポーサン品種は、ほぼ無肥料、無農薬の自然米に近い形での栽培が可能で、ミャンマーでも最も好まれ、高く販売されている。 広大なミャンマーでは、立地条件に合った品種、作付け計画を立てないとならない。天然植物を利用した害虫対策や穀物の適切な保管、土づくり、共同作業などについての成功例を他地域へ紹介することが重要となる。各タウンシップの普及員が情報を集め、要望や意見を集約し、村→郡→県→州→中央へと発信していくのが効果的。

政府の役割は農村インフラ整備、普及、農業ローンの実施など様々。特に安全性についてルールを決め監視することが重要。エーヤワディーでは近隣の国からの肥料・農薬などミャンマー語で説明していない製品が散見されている。安価だが成分が正しいのかどうか、使用禁止の製品ではないのか危惧される。 ミャンマー農業の発展は政府、精米業者などの民間企業、農家の3 者のバランスが重要となり、1 番のポイントは、農民が意欲を持てるかどうか。確かにかつて、ミャンマーは米の一大輸出国だった。しかし、その当時の農家が幸せだったのかどうかは、考えてみなければならない。最も立場が弱い農民が、意欲を持ってコメ作りをできるような政策が必要だと思う。

日本からも参加
盛況の農業・畜産見本市

民主化が進み、各種見本市が活気を帯びているヤンゴン。2016 年12 月に開催された農業・畜産見本市「アグリ・ライブストック2016」にも、世界中から多数の企業が集結。日本からは、1918 年に創業し、山形県に本社を置く山本製作所が参加していた。同社はすでに、カンボジアやインドなどでも農機販売を展開。ミャンマー市場の感触をうかがった。

山本製作所

「ミャンマーに潜在的な可能性を感じ、出展を決めました。今回は籾用乾燥機、精米関連の一連の機械について展示。代理店発掘という目的とともに、日本の技術でミャンマー農業に貢献できれば。当地には安価な中国製が多く流通していますが、品質を向上できない、ロスが多いとの不満をお客様が持っておられ、日本の技術に高い関心があると実感しました」(海外部の横尾康・セールスマネージャー)

日本のご飯モノがヤンゴンで買える!
イオン・オレンジ

昨年9 月、日本のイオンが、地元のスーパーマーケットチェーンのオレンジと提携した。それを機に、タムウェー店や北オッカラパ店といった一部店舗で、惣菜やおにぎり、日本のカレーライスや唐揚げ弁当などの販売を開始。おにぎりは日本米と近く、モチモチ感のあるシャン米を使用。塩もエーヤワディで採れた粗塩を使うなどこだわっているという。現在は、サーモン、チキン高菜、ピリ辛焼豚、ツナマヨの4 種類。「 今後ともお客さまのご意見を聞きながら“、安心”“安全”“健康”をキーワードに様々なデリカ惣菜にチャレンジして参ります」(惣菜担当のテイザータン・シニアマネージャー)。 また、マーケットプレイスやシティエキスプレスといったスーパーやコンビニも、おにぎりや日本風弁当の販売を始めている。今後、ミャンマーで日本風のご飯モノの需要が増えそうだ。

蒸気精米機が今も動く精米村
ジョービンガウッ村 訪問記

1 月のある日、バゴー管区のジョービンガウッ村を訪れた。ヤンゴンから車で約5時間。目的地へ近づくにつれ、白い米袋を荷台に山積みにしたトラックが目につき始めた。ジョービンガウッ村は、精米村として有名なのだ。「 この村では、住人の 7 割近くが精米業に携わってるんだ。村で稼動している精米機の数は、実に50 台とも100 台ともいわれてるよ」。

 

そう語るのは、一見、民家に見える精米所を経営する男性。家の中いっぱいに鎮座する大きな中国製精米機がフル稼働し、米袋を担いだたくさんの人たちが中と外を行ったり来たりしている。小さな家内工場のようなところから何台もの機械を並べた大規模工場まで、道路沿いには大小様々な精米所が建ち並ぶ。

 

ある工場に入って驚いた。博物館でもなかなか見ないような、蒸気精米機が現役で動いているのだ。自慢げに案内してくれた老経営者は、機械の由来をこう語る。「 95 年前にここへ持ち込まれたって、死んだ親父から聞いてる。古い蒸気船を再利用してインド人が作ったって言うんだけど、ホントかね?
この村には植民地時代から精米機が6、7 台あったらしいが、軍政時代に政府がここを含む周辺4 村に精米所を集中させたので、こんなに精米所ばっかりになったのさ」。
ジョービンガウッ村は、ヤンゴンから米どころのバゴー管区を通り、やはり米どころのザガインへと延びる道中にある。この立地が精米所に適しているのだろう。村人たちによると、2011 年頃から特に忙しくなったという。ムセから中国へ輸出できるようになったためだそうだ。
ざっと見て回った限り、日本製精米機には出会えなかったが、いずれ日本製が村を席巻する時代が来るのだろうか。