親日ミャンマー人が現地で経験した2度目のクーデター

(最終回)国軍が牛耳るミャンマーの利権

 2014年、ミャンマーから中国への翡翠(宝石)の輸出金額は1.4兆円にも上った。

 宝石の利権のほとんどは前軍事政権の総司令官タン・シュエの家族、オン・ミィン元大臣、ミャンマー経済公社(MEC)、HTOOグループ、Asia Worldグループ、KBZ Group、Ever Winnerグループ、Sky Net、ワ族の少数民族武装勢力や麻薬組織などが握っていることがわかり、巨大な資金源になっていると英国のGlobal Witnessが報じた。

2021年3月にネピドーで開催された宝石展示会を視察するミン・アウン・フライン国軍総司令官

 また、翡翠だけではなく、他の鉱山の利権も含めれば、資産価値は3.4兆円になるとみられ、その金額は当時のミャンマーのGDPの約半分にあたる。豊かな自然が生んだ利益の大半が軍関係者の富につながったが、鉱山地域や労働者たちは搾取され、負のスパイラルを今もなお強制されている。

 軍関係者が既得権益を不当に得ることで、この国は民主化が遅れた。その金は不動産などの投資に流れ、ときに民主化反対運動への支持者の資金源にもなった。

 資源開発にも強いパイプを持ち、ほとんどは軍関係者やタン・シュエ総司令官の家族の企業が牛耳っており、サブコンもすべて軍関係者で成り立っている。彼らは不当に国の資産を強奪し、国民はそうした構造を変えることはできない。税金も払っておらず、数百億円の脱税も明らかとなった。ただし、そうしたことは氷山の一角に過ぎない。

 利権が流れる構造は階層式になっていて、トップから下の2階層目は軍関係者が押さえ、技術供与する外資系企業は中国企業。3階層目は軍に間接的につながりのある財閥系企業で、結局軍が経済界と市場を操作しているため、経済は軍関係の人脈で成り立っているという歪なピラミッドとなっている。また、中国の国境沿いのワ族も関与し、中国の支援を得て、宝石利権、麻薬栽培で独自の経済圏を確立し、強固な組織として発展してきた。

 ミャンマーは5~60年の軍事政権による経済干渉で独自の基盤が作られ、真の民主化を推進するスー・チー氏を排除することとなった。
 しかし、我々は国軍に抵抗し、国を再建させるため最後まで戦うつもりだ。

※この連載は今回をもって最終回となります。これまでご愛読いただき誠にありがとうございました。

Bandee
1965年、ヤンゴン市生まれ。88年、ヤンゴン大学在学中に8888民主化運動に参加。91年に日本に留学し、語学を学ぶ。2004年にミャンマーに帰国後、ボランティアの日本語講師となる。現在は主に人材派遣の育成プログラムを作成し、教育事業を行っている