【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2018年2月号>Yangon University of Foreign Languages 学長 チー・シュイン氏

今回のテーマ優秀な日本語人材を輩出する大学

チー・シュイン氏 [Mr.U Kyi Shwin]

Yangon University of Foreign Languages
学長

1963年モゴック生まれ。ヤンゴン大学で英語学の博士号を取得。2016年からヤンゴン外国語大学の学長を務める。学術論文の発表も多数。最近の論文に「Features of World-ClassUniversities」など。

全外国語学科の中で日本語の人気は2位
言語だけでなく幅広い知識を持った人材を育てたい

日本語人気が英語に迫る 近年はさらなる増加傾向

永杉 本日はミャンマー屈指の有名大学、ヤンゴン外国語大学(YUFL)学長、チー・シュインさんにお話を伺います。お忙しいところ貴重なお時間をいただきありがとうございます。

チー こちらこそ、ミャンマージャポンのTOP対談にお声がけいただきありがとうございます。

永杉 ヤンゴン外国語大学は、多くの卒業生が日系企業で日本語人材として働いていることもあり、ミャンマーにいる日本人ならば誰もが知る有名大学です。YUFLに在籍する学生の数を教えていただけますでしょうか。また、日本語を専攻する学生の人数も合わせて教えてください。

チー 2017年9月時点で、合計3346名が当校で学んでいます。これは学士号取得を目指す学生の数です。そのうち日本語学科に在籍している学生は1242名にのぼります。

永杉 ずいぶん多くの学生が日本語を学んでいるのですね。日本語学科の内訳はどのようになっているのでしょうか。

チー まず午前中にディプロマクラスがあります。日中には学士号クラス、資格取得クラス、博士号クラスが設定されています。さらに夕方からは聴講生を対象にCentre of Human Resource Development (CHRD)というクラスでも日本語を教えています。

永杉 YUFLにはほかの言語の学科もありますが、人気の学科を教えてください。

チー 2016年のデータですが、全外国語のうちトップは英語。二番目が日本語となっています。これに韓国語、中国語、フランス語、タイ語、ドイツ語、ロシア語と続きます。ほかにもディプロマクラスとしてイタリア語の授業があるほか、留学生を対象としたミャンマー語の学士クラスとディプロマクラスなどもありますが、やはり英語と日本語は人気が高いです。二つの言語を専攻する学生数には大きな差はありません。

永杉 学生数の推移はいかがでしょうか。近年、日本語を履修する学生は増えましたか。

チー 確実に増加していますね。2015~16年にかけて学士号クラスに入学したのは108名、ディプロマクラスは23名でした。それが2016~17年にかけては、それぞれ141名と48名になりました。これを見るだけで明らかに増加しています。また、CHRDクラスには2017年に540名の聴講生が登録するなど、日本語学習への興味は確実に高まっていると言えるでしょう。

学生増加は日本への愛着の表れ 日本の大学との交流も活発に

永杉 なぜそれだけ日本語学科に人気が集まるのでしょうか。

チー 二つの要因があると思います。一つはやはり日系企業の進出が相次ぎ、就職のチャンスが多いことが挙げられます。そしてもう一つは日本とミャンマーの間にある深い絆が影響しているのだと考えられるでしょう。
第二次大戦でミャンマーは日本に統治される歴史がありました。しかし、これはあくまでも政治の話です。戦後の日本はミャンマーの復興に尽力してくれました。戦後賠償として譲渡され、長年ミャンマーの交通機関として親しまれた日野自動車のバスもその一つです。物質的な面だけでなく、日本人の心の温かさや人道を重視する心に触れたことからもミャンマー人は日本人への愛着を深め、今日までよい交流を続けてきました。これが日本への興味を高め、日本語学習を志す若者の増加につながっているのでしょう。

永杉 日本人も同様の愛着をミャンマーに対して抱いています。ミャンマーに一度訪れた日本人はこの国のことを好きになります。それは心が温かく、真面目な国民性であるということが一番の理由だと思いますが、心の本質がとても似ている気がします。
ところで、YUFLと日本の関係についてお伺いします。現時点でMOU(了解覚書)を締結している大学や団体はありますでしょうか。また、その内容についてもお聞かせください。

チー 主なものですと、創価大学とAEON 1% Clubとの間でMOUを締結しています。一方、MOA(合意覚書)についても、国際交流基金や名城大学、城西大学などともそれぞれ覚書を締結しています。MOU、MOAを合わせたすべての覚書は8つにのぼります。 これらの覚書は「学生の交換留学」「教員の交換研修」「共同研究」「学術会議の開催」という4つの項目を基本としています。創価大学との交流は特に活発で、年に2回10名ほど、2週間程度の短期留学生を同大学から受け入れています。一方、当校の日本語学科の学生1名が奨学金を得て、創価大学で一年間学ぶプログラムがあります。ほかに、大阪大学とも覚書を締結し、同校の教員が毎年1名、YUFLでミャンマー語を学びます。大学の要望で契約内容は変わりますが、活発な交流が行われていますね。今後もMOUやMOAは増える予定で、さらに近い将来、2つの大学と覚書が締結される予定です。

永杉 日本の大学や団体のほか、日系企業もYUFLに強い興味を持っています。企業からの奨学金制度などはありますでしょうか。

チー 私が当大学に赴任してからまだ1年しか経っていませんが、その間だけでもAEON 1% Club、三井住友銀行、吉野家、三菱東京UFJ銀行から学生に対して奨学金が付与されています。各企業から当校の学生に対する期待の大きさを感じます。

政治や経済から文化まで豊富な知識を持つ人材育てる

永杉 今後YUFLが目指す教育の形、ビジョンを教えてください。

チー これまでは言語を教えることのみに留まっていました。しかし、今後はさらに外国の経済や文化などにも深い造詣を持つ人材を育てていきたいと考えています。海外に住み、その国で学ぶことでビジネスレベル以上の言語を習得することに加え、政治、経済、外交、文化など幅広い知識を蓄積した人材を育てることを目標としています。

永杉 単に言語だけでなく、その国の背景まで学ぶという取り組みは素晴らしいですね。私も2年前、YUFLで日本の税制や銀行に関する講義を行ったことがあり、インターン生も受け入れています。当時の学生さんとは、その後日本でも再会できました。こうした交流は両国にとって大変重要なことだと思います。貴校の取り組みが日本との間でも行われ、日本とミャンマーの橋渡しをするような若者が今以上にYUFLから輩出されることを期待しています。本日はありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON BUSINESS」、「MJビジネスバンコク版」、ヤンゴン生活情報誌「ミャンジャポ!」など4誌の発行人。英語・緬語ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON+plus」はミャンマー国際航空など3社の機内誌としても有名。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」ではTV番組を持つ。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。 一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、WAOJE(旧和僑会)ヤンゴン代表。