【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2015年3月号>駐日ミャンマー連邦共和国大使 Khin Maung Tin 氏

今回のテーマ:伝統的な友好関係を次のステージへ

駐日ミャンマー連邦共和国大使
1955年生まれ。シュエイ・ポ市。理学士(防衛大学)・文学修士(防衛研究所)。1976年にミャンマー国軍(空軍)に入隊、航空職と管理職を務める(階位は少尉から准将まで)。 2010年9月に外務省へ転属。翌11年2月、駐日ミャンマー連邦共和国大使として着任し現在に至る。趣味はゴルフ、読書、執筆など。

登竜門としてのポジション

永杉 本日はインタビューの機会を頂戴し、誠に光栄です。駐日ミャンマー大使というポジションは、ウー・ラ・ミン前駐日大使が現在ヤンゴン市長を務められておられるように政府要職の登竜門でもあり、重要なポストだと伺っております。キン・マウン・ティン大使は、元空軍准将というご経歴をお持ちとのことですが、現在の任務に就かれていることをどのようにお考えですか。

ティン 私の使命は両国の友好関係がより深められていくべく努力していくことにあります。ミャンマーは、2011年から大統領の指示で改革がはじまり、政治、ビジネス、社会全般にわたり大きく変化を遂げました。その評価は世界各国、さまざまであるかと思いますが、日本からは多大なサポートをして頂いています。

永杉 着任は11年2月でしたでしょうか。以来、大使が携われた仕事のなかで最も印象深かったのは何でしょうか。

ティン 大使に着任して間もなく、日本外務省の大臣、副大臣がミャンマーを訪れられるように準備をいたしました。一方で、12年にはテイン・セイン大統領が訪日を果たし、それを受けて13年に安倍首相が訪緬する際も事前の調整に尽力しました。
日本の外務省が協力的であったこともあり、打ち合わせはいつもうまく行きました。また政府間外交の地ならしをしながら、民間交流の促進に向けたさまざまな取り組みをいたしました。ミャンマーからより多くの留学生が日本を訪れられるように計らったり、保健・医療分野における支援(ODA)をいただくために尽力したりいたしました。そのほか、メディア関連の人たちをミャンマーに招いたことや、共同通信のヤンゴンオフィス設立にも協力いたしました。

真面目でフレンドリーな国民性

永杉 大使のご尽力もあり、日緬関係はかつてないほど友好的なものになっていると思います。
これまで日本の各地を視察されたと伺っていますが、日本の社会についてはどのような印象を抱いていますか。

ティン 日本はどこに行っても綺麗で、すべてが整然としているのがとても印象的です。日本の方々が礼儀正しい振る舞いをしていることや、社会システムがしっかりしていることに感心しています。たとえば、交通機関が時間通りに運行されていることは驚くばかりです。そして、日本人の仕事の進め方もまた特徴的であり、先のことまで見通し、ディテールを確かなものにしたうえで着手する姿勢には感銘すら受けます。

永杉 礼儀正しいというのは、むしろミャンマーの人たちの利点でもあるといえないでしょうか。 私が思うのは、ミャンマー人は識字率が高く、聡明であり、また真面目でフレンドリーで、とても温かいということです。ヤンゴンに住む多くの日本人がそう感じていると思います。

ティン たしかにミャンマー国民はフレンドリーです。勤勉で一生懸命に働きます。また、足ることを知る人が多いともいえます。満足度が高いのです。信仰心が厚く、寄付にも積極的です。三世代の家族が同じ屋根のもとで一緒に生活を送り、両親や目上の人、僧侶に対しては敬意を以って接しています。

良好な両国の関係は今後も進化と発展を続けてゆく

投資誘致に向けた取り組み

永杉 数十年前の日本もいまのミャンマーと同じような空気に包まれていたと感じることがあります。そんな互いに共通点をもった両国の関係について、今後どのような期待を抱かれていますか。

ティン 経済交流における発展を期待したいですね。私たち大使館では、経団連やジェトロ、ヤンゴン日本人商工会議所(JCCY)、国際協力機構(JICA)などが手がけるさまざまな経済セミナーについて橋渡しの役目を担ってきました。日本からの投資拡大やビジネスマッチングにも大きな役割を果たしてきたといえるはずです。

永杉 ミャンマーには、知的水準の高い人材のほか、豊富で手付かずの天然資源や、中国とインドという2大国に隣接する交通の要衝といった地理的アドバンテージもあります。しかし、外国企業がいざ投資するとなると、電気や物流など産業インフラの面で大きなハードルがあるというのが正直な感想です。

ティン こうした課題への対処は待ったなしだと政府も認識しており、克服に向けた取り組みを優先的に行っています。今までは国際社会における経済制裁もあり、なかなか実行に移すのが難しかったのですが、外国投資法の修正をはじめとする法整備や、諸手続きの簡素化、あるいは金融機関のサービスの充実にも取り組んでいます。

永杉 飛躍的な投資環境の整備が期待できるということですね。

ティン そうです。インフラ面で遅れているゆえに、それが逆に外国企業にとって大きなビジネスチャンスとなっているところもあるかと思います。取れるリスクの範囲内で、確実に事業を進めていくことが現実的な選択といえるのではないでしょうか。日本企業は技術力、資金力、信頼の厚さ、どれをとっても有利な立場にあります。ぜひ引き続きミャンマーに投資していただきたいと思っています。

友好関係のさらなる「進化」を

永杉 今後、両国は経済面でますます密接な関係になっていきそうです。

ティン 三菱商事やJALUX が手がけるマンダレー空港のプロジェクトや、日本のメガバンク3 行に対する営業権の認可、MPT と住友商事やKDDI が協力して進める通信インフラ整備、また証券取引所の開設計画、そしてティラワ経済特区(SEZ)の開業など日本との提携プロジェクトをあげると枚挙にいとまがありません。ダウェイ経済特区の開発も重要です。
ミャンマーは海外からの技術の導入も必要としています。今後、民主的かつ近代的な国づくりに向けて一層の改革を進める上で、日本や国際社会には引き続きご支援をお願いしたいものです。日本政府や各団体、組織、民間企業の方々からは、両国間の関係強化や相互理解のために努力していただいており、引き続き友好的な関係を維持、発展できることを願っています。

永杉 ミャンマーを訪れる観光客も増えていますし、今年もまた大きな飛躍がありそうですね。

ティン ミャンマーにはカカボラジ山のような名山や風光明媚なインレー湖、世界遺産に申請中のバガンなど素晴らしい観光資源が多くありますので、さらなる観光誘致にも努めたいものです。
そのうえで、ODA を通した鉄道ほか交通インフラの整備にもぜひ注目していただけたらと思います。ヤンゴンとバゴーを結ぶ鉄道の電化計画も進展中です。

永杉 理想と現実にはまだまだ大きなギャップがありますが、変化のベクトルは良い方向に向かっていると考えてよろしいでしょうか。

ティン ええ。変化には時間がかかるものもありますが、必ず良い方向で着地点が見つけられるはずだと確信しています。昨年はミャンマー日本外交関係樹立60 周年という節目を迎えましたが、伝統的に友好を保ってきた両国の関係は今後も進化と発展を続けていくはずです。

永杉 日本とミャンマー双方がお互いに対して抱いている期待は大きいといえます。足取りを確かに着実な発展があることを望むばかりです。本日は年明けのご多忙な折り本当にありがとうございました。

「ミャンマー祭り2015」の日程決まる!

日本ミャンマー外交関係樹立60 周年を迎えた昨年10月18、19日、秋晴れのもとで行われた「ミャンマー祭り2014」は大盛況。会場となった東京都港区芝の増上寺を訪れた来場者数は6万人と、初めての開催だった前年(2013年)の倍数近くにのぼった。
そして今秋。11月28日、29日に第3 回目となる「ミャンマー祭り2015」が開かれる予定だ。
外交樹立60 周年はあくまで節目であり通過点に過ぎない。「61周年」にあたる2015年は、ミャンマーと日本の交流の輪がますます広がり、両国の絆がいっそう深まる年になることは間違いない。
(写真は「ミャンマー祭り2014」の模様。ミャ ンマーの「寺子屋小学校」と明徳幼稚園の園児 たちが描いた『世界一大きな絵』が披露された。)

MYANMAR JAPON CO., LTD. 代表
MYANMAR JAPON および英字情報誌MYANMAR JAPON+ plus 発行人。ミャンマービジネスジャーナリストとして、ビジネス・経済分野から文化、芸術まで政府閣僚や官公庁公表資料、独自取材による多彩な情報を多視点で俯瞰、マーケティング・リサーチやビジネスマッチング、ミャンマー法人設立など幅広くミャンマービジネスの進出支援、投資アドバイスを務める。ヤンゴン和僑会代表、一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員。